アブスコパル効果を考えたときの放射線治療

2019年1月29日

2017 Nov 1;99(3):677-679. doi: 10.1016/j.ijrobp.2017.07.028.

Optimizing Dose Per Fraction: A New Chapter in the Story of the Abscopal Effect?

 

放射線治療は1回に照射する線量や、照射回数を変更することで、様々な効果を得ることができる。
 簡単には、1回に当てる量を増やせば治療効果を上げることができるが、一方で副作用も強くなってしまうという特徴がある。
このため、1回線量をあげる場合には副作用を出ないようにする様々な工夫が必要となる。
これは定位照射における話になるので、今回は触れない。
今回は、アブスコパル効果を高める放射線治療とはどういったものかという話である。

 

以前の研究では1回に20-30Gy程度を照射した場合と、8Gyを3回に分けた場合とを比較して、免疫反応が誘発されるかどうかを調査している。
上に書いたように、1回で高線量を投与したほうが腫瘍の制御は高いのであるが、免疫反応は8Gyを3回に分けたほうが良好に誘発されていたという結果であった。
その後の様々な研究の結果から、1回線量は10-12Gy程度までがアブスコパル効果を期待する上では重要で、これよりも高線量を投与するとアブスコパル効果はあまり期待できないと考えられている。

 

また、照射回数や期間についての研究では、4回照射を2週間にわたって照射した場合は、十分なアブスコパル効果が見られなかった。
一方で、3回照射や5回照射を連日で施行した場合にはアブスコパル効果が見られた。
このため、治療の回数は3-5回程度が適当と考えられる。

 

 アブスコパル効果はまだまだ新しい概念であり、今後もさらに研究が進んでいくものと考えられる。
今回の報告のように、アブスコパル効果を求める場合には、これまでの通常の放射線治療ではなく、より効果を出すのに最適化された治療を行う必要性があることが示唆される。
アブスコパル効果は従来の治療の効果をさらに上乗せするものであり、有効に利用することで、これまでよりもより高い治療成績が目指せるものと考えられる。

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