アメリカにおける5年間での放射線治療の内訳の変化が興味深い

目次

1:アメリカにおける放射線治療の推移
2:ほとんどの施設で高精度治療が可能
3:実施施設が減っている治療もある

4:実施施設が少ない治療法
5:参考文献

 

アメリカにおける放射線治療の推移

アメリカにおいて、それぞれの医療機関でどのような放射線治療が実施可能なのかを調査した研究を紹介します。

2012年時点のものと、2017年時点のものを比較しています。

Technology 2017 (%) N = 1174 2012 (%) N = 1033 Change from 2012 (percentage points)
IMRT 99.2 98.6 +0.6
3-D conformal therapy 99.0 97.8 +1.2
IGRT 97.5 93.2 +4.3
MRI or PET-CT fusion 95.8 67.4 +28.4
Cone beam CT 93.6 75.6 +18.0
SBRT 85.6 69.3 +16.3
4-D CT simulation 83.4 N/A
VMAT 80.3 N/A
SRS 75.4 68.7 +6.7
HDR brachytherapy 67.0 N/A
Deep inspiration breath hold 65.2 N/A
Respiratory gating 53.6 N/A
LDR brachytherapy 40.5 56.4 –15.9
Unsealed source 35.4 38.2 –2.8
Total body irradiation 26.1 32.2 –6.1
Radioactive microspheres 20.2 N/A
Intra-operative radiation therapy 18.6 13.7 +4.9
Particle/proton beam therapy 12.5 6.1 +6.4
Brachytherapy, electronic 11.6 7.9 +3.7
Hyperthermia 5.1 6.1 –1.0

これは実際の本文中の表を引用したものですが、それぞれの内訳をみていこうと思います。

ほとんどの施設で高精度治療が可能

IMRT(強度変調放射線治療)は2012年時点でほとんどの施設で実施可能となっています。

そして、その比率は2017年時点でさらに上昇しています。

3次元照射についても同様の傾向です。

IGRT(画像誘導放射線治療)については2012年時点では93.2%でしたが、2017年時点では上昇して97.5%となっています。

これを見ると、ほとんどの施設で高精度放射線治療が実施可能であるとわかります。

変化が大きいものとしては、MRIやPET画像とのフュージョンが5年間で28.4%と上昇しており、画像精度についても多くの施設で向上しています。

また、SBRT(体幹部定位照射)は2012年時点では70%程度でしたが、2017年時点では85%程度まで上昇しています。

おそらく現在ではより多くの施設で実施可能となっているでしょう。

実施施設が減っている治療もある

個人的に興味深いと感じたのは、実施施設が減っている治療もある、ということです。

減っているのはLDR、つまり小線源治療です。

小線源治療にはLDRとHDRの2種類がありますが、HDRは2017年時点で67%の施設が実施可能であり、おそらくこれは増加傾向にあるのだと思います。

いっぽうでLDRは2012年時点よりも15%減少しています。

LDRやHDRは主に前立腺癌の治療に用いられる技術であり、前立腺癌治療の方法が変わってきていると推測されます。

一部の施設はLDR治療からHDR治療に移行していったと考えますが、単純にLDRを行わなくなっている施設もあると思います。

これはLDR以外の有効な治療法、例えばHDRや短期的な外照射(IMRTやSBRTを含む)、が開発されてきたことにより、LDRを選択する機会が少なくなってきたのではないかと考えます。

LDRじたいは前立腺癌において有効な治療法ではありますが、実際に実施している施設は日本においてもそこまで多くなく、そうなると研修医などが治療に触れる機会も少なくなり技術継承が途絶えるということもありそうです。

全身照射(TBI)も割合が減っている治療のひとつです。

TBIは主に白血病などでの骨髄移植前の処置として実施されることが多いですが、2017年時点では6%ほど減少しています。

実施施設が少ない治療法

特殊な放射線治療として術中照射があります。

これはその名の通り、手術中に患部を開いた状態で、直接その部分に照射をするというものです。

手術中に照射をするため、非常に手間がかかる治療とも言えます。

2012年時点では14%程度の割合でしたが、2017年時点では19%程度まで上昇しており、需要があることがうかがえます。

おそらく日本ではそこまでの実施施設はないと思います。

粒子線治療施設は2017年時点では12.5%でした。

現時点ではさらに割合は上昇しているものと考えます。

日本でも粒子線治療は普及してきていますが、普及のスピードはアメリカのほうが早い印象があります。

また、実施施設が少ない治療法としては温熱療法があります。

今回の研究での報告でも5%程度と一部の施設でしか実施されていません。

温熱療法も骨転移や骨盤領域の治療において有効性が報告されてはいますが、なかなか一般的に普及はしていない状況です。

 

参考文献

The American Society for Radiation Oncology 2017 Radiation Oncologist Workforce Study

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