化学放射線療法が著効した直腸癌では手術を回避できる

目次

1:直腸癌の標準治療は
2:手術をしなかった群とした群の比較
3:まとめ
4:参考文献

 

直腸癌の標準治療は

ステージ2~3の手術可能な直腸癌における標準治療は、化学放射線療法を先行したのちの手術療法です。

いっぽうで、先行する化学放射線療法で著効した症例において手術を行わなかった場合にどのような経過をたどるのかというのは十分に調べられてはいませんでした。

直腸癌においては手術を行うと肛門機能を失う可能性があり、その場合は人工肛門をつけて生活することになります。

人工肛門をつけての生活は、生活の質(QOL)を下げてしまうため、避けられるのであれば避けたいものではあります。

今回紹介する論文では、先行する化学放射線療法が著効した症例で、手術を行った群と行わなかった群を比較して、その後の治療成績を評価しています。

 

手術をしなかった群とした群の比較

この研究はアメリカにおける退役軍人のデータをもとに評価されています。

アメリカでは退役軍人の数が多く、その人たちがどのような疾患になり、どのような治療を受けたかというのが詳細にデータ化されており、しばしば研究に利用されています。

今回の研究もそのデータを利用して行われています。

全部で1313例が解析対象となっており、そのうちの313例は化学放射線療法のみを行った群で、残りの1000例が化学放射線療法ののちに手術療法を行った群となっています。

結果として化学放射線療法のみの群での平均生存期間は30.6か月であったのに対し、手術療法を加えた群では89.3か月でした。

この化学放射線療法のみの群をさらに解析すると、この中でも治療が著効した症例が約20%あり、この著効した群の平均生存期間は73.5か月と手術療法群と大差ない結果でした。

いっぽうで、手術療法を加えた群で、得られた組織を顕微鏡的に解析し、腫瘍が消失していた症例は約10%存在し、その群での平均生存期間は133.7か月でした。

 

まとめ

直腸癌の治療において、先行する化学放射線療法で著効した症例の治療成績は手術療法を加えた群と拮抗するものでした。

つまり、化学放射線療法で著効した症例においては手術療法を回避できる可能性があります。

直腸癌においては肛門機能をいかに温存するかが、その後の生活の質(QOL)に大きく影響するため、手術を行うかどうかは非常に重要な選択です。

治療成績のみを見るのであれば手術を行うのが無難ですが、化学放射線療法が著効しているのであれば手術を行わないというのも一つの選択肢になり得ると考えます。

いっぽうで化学放射線療法が著効しなかった場合には、その後の治療成績が大きく異なるため、手術が可能であるならば基本的には手術を受けたほうが良いです。

 

参考文献

Long-term Clinical Outcomes of Nonoperative Management With Chemoradiotherapy for Locally Advanced Rectal Cancer in the Veterans Health Administration

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