乳癌術後の寡分割照射が増えてきている

目次

1:乳癌術後の寡分割照射
2:寡分割照射の割合の変化
3:寡分割照射の今後
4:参考文献

 

乳癌術後の寡分割照射

乳癌術後の寡分割照射が増えてきているという話題を紹介します。

乳癌の治療では、早期であれば腫瘍のみを切除して乳房を温存するのが一般的です。

乳房を温存するのは、やはり乳房をすべて取ってしまうと精神的なショックが大きいことが多いからです。

もちろん乳房を全て取ってもそのあとに再建することは可能です。

乳房を温存した場合には、その後に放射線治療を行うのが標準となっています。

これは残存する乳房に再発するリスクを抑えるためです。

この術後の放射線治療は標準的には25回の照射が広く行われてきました。

いっぽうで最近になり、回数を減らした寡分割照射という治療法が増えてきています。

寡分割照射は1回に照射する量を増やすことで、全体の回数を減らす照射法です。

寡分割照射のメリットは回数が減るため治療期間を短縮することができることです。

日本で一般的に行われている寡分割照射は16回程度で照射する場合が多いと思いますので、標準の治療回数よりも9回少なくなり、日数的には2週間程度の短縮になります。

寡分割照射のデメリットとしては急性期の副作用が強くなる可能性が言われていますが、実際のところは標準の回数と比べてそこまで副作用も強くならないようです。

 

寡分割照射の割合の変化

アメリカのデータベースをもとに、寡分割照射の採用割合がどのように変化しているかを調べました。

2012年時点では寡分割照射の採用割合は26.2%でしたが、2016年には67.0%まで上昇していました。

実に半数以上の人が寡分割照射で治療されていることになります。

最近ではコロナ禍もあり、治療期間を短縮するメリットがより大きかったことから、寡分割照射の採用率はさらに上昇していることが予想されます。

データをさらに解析すると、寡分割照射を採用することの多い条件も分かってきました。

アメリカのデータをもとにしているため、日本とは少し事情が異なる部分もあるかもしれません。

寡分割照射を採用するのが多かった条件としては、高齢であること収入が多いこと教育機関での治療病院からの距離が離れている小さな腫瘍リンパ節転移なし化学療法を行わない、などでした。

寡分割照射を採用する場合は患者希望のみでなく、医療側の意図もあり、それぞれが反映されている結果と考えられます。

 

寡分割照射の今後

紹介したように寡分割照射は以前よりも採用率が上がってきています。

これはアメリカだけでなく日本でも同様の傾向にあると考えます。

日本ではまだアメリカほどの採用率はありませんが、コロナ禍を経て、寡分割照射に移行した病院も少なくないと思います。

寡分割照射は標準の照射と比べて副作用もそこまで強くなく、治療期間が短縮できるというメリットもあり、特に働いている人などには良い選択肢になると思います。

乳癌などは比較的若年でも起こり得るため、治療期間短縮のメリットは大きいです。

また、医療経済的に言うと、治療回数が減るため費用も少なくなります。

医療機関にとってはこの点はデメリットとなりますが、いっぽうで治療期間が短くなればそれだけ多くの人を同じ期間に治療できるという面もあります。

寡分割照射は今後さらに広がっていくと考えられます。

これは乳癌に限らず、前立腺癌やその他の癌でも増加していくのではないかと考えます。

放射線治療を受けるにあたって様々な選択肢ができるのは良いことだと思います。

 

参考文献

Trends in Use of Hypofractionated Whole Breast Radiation in Breast Cancer: An Analysis of the National Cancer Database

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