乳癌の寡分割照射は腕神経叢障害のリスクとなるのか。

2019年2月12日

2017 Dec 1;99(5):1166-1172. doi: 10.1016/j.ijrobp.2017.07.043. Epub 2017 Aug 3.

Hypofractionated Nodal Radiation Therapy for Breast Cancer Was Not Associated With Increased Patient-Reported Arm or Brachial Plexopathy Symptoms.

 

乳癌の寡分割照射は腕神経叢障害のリスクとなるのか。

今回の研究では、乳癌術後に対して最近少しずつおこなわれるようになってきている、寡分割照射が腕神経叢障害のリスクとなるのかどうかを検討したものである。

 

腕神経叢は脊髄からでてくる神経で、頚椎レベルで分岐して腕に向かう神経である。このため、乳癌などで頚部や鎖骨上窩を照射したときの副作用として問題となる。
自分の担当の患者で、乳癌では無かったが頚部を照射したあとに手が痺れるという訴えがあった。
経過からはこの腕神経叢障害の可能性があると考えられた。
頻繁に見られるものではないのだが、一定の確率では起こる可能性があるというのを実感した。

 

今回は、通常の放射線治療と比較して、寡分割照射でこのリスクが増加するか検討している。
寡分割照射は1回の線量を上げて、治療期間を短くすることを目的とした治療であるが、1回線量を上げると放射線の副作用が増加する可能性がある。
今回の治療では40Gy/16Frあるいは45Gy/20Frという分割回数で治療したものと通常の放射線治療を比較している。

 

結果として、寡分割照射において、腕神経叢障害の発生が有意に増加するということはなかった。

 

現時点では乳癌術後に対する寡分割照射はまだまだ一般的な治療とは言えないが、こういった知見が積み重なっていくと、将来的には寡分割照射の割合が増えていくのではないかと思われる。

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