高リスク前立腺癌における通常照射と寡分割照射の24か月後の副作用の比較

まとめ

高リスク前立腺癌の放射線治療において、通常分割照射と寡分割照射の副作用の比較では、長期的には両群で副作用の程度に有意な差は見られなかった。

 

 解説

高リスク前立腺癌における、通常分割照射と寡分割照射での長期的な副作用を比較した研究である。

通常分割照射は78Gyを39回にわけて照射し、寡分割照射では68Gyを25回にわけて照射している。

寡分割照射のほうが14回分の治療期間を短縮できており、約3週間ほど治療期間が短くなる。

この2つの照射法にランダムで患者を割り付けし、その後の副作用を評価したものである。

結果として、排尿および性機能に関しては、全期間を通して両群で大きな違いは見られなかった。

一方で、排便に関しては、通常分割照射のほうが治療後3-18ヶ月の期間でQOL(生活の質)の低下が少ない傾向にあった。

最終的に24ヶ月時点では両群でQOLに有意な差は認めないという結果であった。

前立腺癌はその性質上、同程度の線量の場合、1回線量を増やすほうが治療成績が改善する可能性がある。

このため、高リスク前立腺癌において寡分割照射を選択するということは、治療期間の短縮のみでなく、治療効果の改善についても期待できるかもしれない。

今回の研究では、寡分割照射の副作用が、通常照射と比較して長期でみると大きな差はないことをしめしたものであり、今後の寡分割照射の普及への後押しになるものと考えられる。

特に、最近ではCOVID-19感染以降、治療期間を短縮できる寡分割照射を選択する機会が増えており、前立腺癌においても寡分割照射がより選ばれるようになる日も遠くないかもしれない。

以前の記事でも触れたが、寡分割照射においては直腸スペーサーの併用も、直腸線量を下げて副作用を低減させるという点で有用であり、あわせて広がっていく可能性がある。

 

参考文献

Conventional Versus Hypofractionated Radiation for High-Risk Prostate Cancer Patients (CHIRP): 24-Month Patient-Reported Outcomes of the Randomized Phase 2 CHIRP Trial

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