頭頚部癌放射線治療後の脳梗塞リスクについて

2017年4月3日

2016 Nov 1;96(3):589-96. doi: 10.1016/j.ijrobp.2016.07.007. Epub 2016 Jul 17.

Stroke After Radiation Therapy for Head and Neck Cancer: What Is the Risk?

 

頭頚部癌に対する放射線治療において、脳梗塞の発生は長期的なリスクとして以前から指摘されているものであり、この研究では約14000人と、大規模な患者を対象として、手術群と放射線治療群でのリスクを評価したものである。結論としては、単変量解析および多変量解析のそれぞれにおいて、年齢、放射線治療の有無、合併症の有無が、脳梗塞発生のリスクにおいて有意な指標となっていた。

 

ハザード比は手術群に比較して、なんらかの放射線治療を受けた群で、1.7という結果であった。

本文中では、手術群と放射線治療群での、脳梗塞による死亡でグラフが描かれており、放射線治療群で悪い結果となっているが、死亡率に関するログランク等の解析結果は示されておらず、有意差は出ていないのかもしれない。

いずれにせよ、放射線治療が脳梗塞リスクを高めることは、この論文においても示されており、高齢者や合併症を有する患者の治療においては、特に注意すべきであろうし、そのリスクを十分に説明する必要があるであろう。

 

近年はIMRT等の高精度治療が頭頚部癌に対しても行われるようになっており、これまでの照射よりも、組織に照射される線量評価はより複雑となっている。脳梗塞のリスクとなりえるのは、血管、特に内頸動脈の線量と考えられるが、高精度照射では、以前の治療よりも血管により高線量が照射される場合もあるため、長期的な副作用についてはより慎重にみていく必要があると考えられる。

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