局所進行食道癌に対する陽子線照射とX線照射の治療成績の比較

まとめ

局所進行食道癌に対する陽子線照射とX線照射の治療成績の比較で、3年時点での局所制御に有意な差はなく、QOLについても差が見られなかった。

 

 解説

局所進行食道癌に対して、陽子線治療を行った場合と、X線を用いたIMRTを行った場合を比較したランダム化比較試験の報告である。

ランダム化比較試験は後ろ向き研究などよりもエビデンスの高い研究方式であり、その結果についてもある程度の信頼性が担保されるものである。

この試験では患者は無作為にどちらかの治療方針に割り付けられる形になるが、どのような治療法になっているかは治療機械が異なるため、一目瞭然であり、盲検化試験(患者自身がどちらで治療されているかわからない試験)ではない。

実際に割り付けられたのちに、別の治療法を希望した患者もおり、その場合は研究の対象から除かれている。陽子線治療群に割り付けられながら、X線治療を希望した患者の理由の多くは費用面であった(陽子線治療のほうがX線治療よりも通常高額である)。

結果として、治療後3年での局所制御は両群ともに大きな差はなく、約50%であった。全生存率は44.5%で、QOL(生活の質)についても両群で有意な差は見られなかった。

陽子線治療のメリットは、その線量分布の優位性で、食道癌のような体の深部に存在する腫瘍を治療する場合に、X線では周囲の臓器にもそれなりに高線量が照射されるのに比較して、周囲臓器への線量を減らすことができるという点である。

食道癌であれば、心臓や肺への線量を低減できることが期待される。

いっぽうで、線量を低減することが実際に治療成績やQOLに結び付くのかというのは重要な問題である。

今回の研究では、腫瘍の制御およびQOLにおいて、両群で有意な差は見られなかったという結果であり、現時点では陽子線治療による優位性が十分に示されたとは言えない。

今後はさらなる長期間の比較検討の結果も出てくると考えられるため、続報が待たれるところである。

 

参考文献

Randomized Phase IIB Trial of Proton Beam Therapy Versus Intensity-Modulated Radiation Therapy for Locally Advanced Esophageal Cancer

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