前立腺癌の監視療法(アクティブサーベイランス)には注意が必要

まとめ

低リスク前立腺癌において監視療法(アクティブサーベイランス)は有効な方法であるが、長期間にわたって忠実に実行されないと、治療機会を逃す可能性がある。

 解説

前立腺癌は比較的予後の良い疾患として知られており、特に低リスクであれば手術や放射線治療といった積極的な治療を行わなくても長期間病気が悪化しないことが知られている。

このため、低リスク前立腺癌においては上記のような積極的治療を行わないかわりに定期的に検査を受けて、悪性度が上がっていないかどうかを監視するアクティブサーベイランス(監視療法)という選択肢がある。

特に高齢者のような積極的治療がその後の生活に大きく影響し、また場合によっては老衰やその他の疾患によって亡くなるリスクのほうが高い場合には十分に考慮される選択肢となる。

そしてデータ的には手術や放射線治療を選んだ場合と、監視療法のあいだで生命予後については大きな差が無いのである。このため、日常臨床においても監視療法が選ばれる場合がある。

しかしながら、実際の日常臨床のデータを見てみると、しっかりと監視療法が実施されているのは思った以上に少なく(アメリカのデータにはなるが最初の2年間で13%程度しかなく)、また時間がたつにつれてだんだんと通院にも来なくなるという結果が示されている。

手術や放射線治療と同程度の成績というのは、綿密に監視を行い悪性化の兆しがあれば、すぐに治療介入をするから得られる結果であって、ちゃんと検査を受けていなかったり、ましてや通院をやめてしまっては、もちろん同等の結果は得られないのである。

ここで言うちゃんとした検査というのは、PSA検査だけでなく、直腸からのエコー検査および定期的な前立腺生検のことである。

これはアメリカのデータであり、日本であればもう少しちゃんと実施されているであろうと考えられるが、監視療法は優れた選択肢ではあるが、しっかりと実施されていないと意味が無いという話である。

参考文献

Receipt of Guideline-Recommended Surveillance in a Population-Based Cohort of Prostate Cancer Patients Undergoing Active Surveillance

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