放射線治療医の偏在と、どこで治療を受けるべきか 〜後悔しない病院選びのポイント〜
がん治療において、どの病院で治療を受けるかは非常に重要です。
特に放射線治療は、施設や医師の経験、機械の性能によって結果が変わる可能性がある治療とされています。
この記事では
・放射線治療医の地域格差
・治療施設による成績の違い
・どのような病院を選べばよいか
について解説します。
放射線治療でも「経験の多さ」が重要とされる理由
外科手術では「症例数が多い医師・施設ほど成績が良い」という報告が多くあります。
実は、これは放射線治療でも同様の傾向があると考えられています。
近年では
・IMRT
・定位照射(SRT、SBRT)
などの高精度治療が急速に普及しています。
これらは
・病変に十分な線量を集中
・正常組織への影響を最小限
というメリットがあります。
しかし一方で
・照射範囲の設定
・精度管理
・治療計画の質
が治療結果に大きく影響します。
つまり、
高精度治療ほど、経験の差が結果に直結しやすいという特徴があります。
海外の研究では、
年間症例数が少ない施設では成績が劣る傾向が指摘されています。
結論として
👉 高精度治療を受ける場合は、経験豊富な施設が望ましい
と考えられます。
日本の放射線治療医はどのくらいいるのか
日本では放射線治療医が不足していると指摘されています。
放射線治療専門医は
日本放射線腫瘍学会の名簿によると約1300人程度です。
ただし
・高齢
・臨床から離れている
などを考えると、実際はさらに少ない可能性があります。
地域ごとの放射線治療医の偏在
都市部には多くの医師がいますが、地方では非常に少ないのが現状です。
例えば
・秋田県 7人
・山形県 6人
・鳥取県 5人
・高知県 5人
など、10人以下の県が複数存在します。
これは県全体の人数であり、大学病院などに集中するため、
実際には標準的な放射線治療を受けられる施設が限られる可能性があります。
海外と比較した日本の医療体制
アメリカでは医療の集約化がさらに進んでいます。
そのため、日本よりも地域格差が大きい傾向があります。
一方、日本は
・施設へのアクセスが比較的良い
・保険制度が整備されている
というメリットがあります。
しかし
👉 施設数が多い分、症例が分散しやすい
という特徴もあります。
放射線治療は「通院の負担」が大きい
放射線治療は多くの場合、通院が必要です。
例えば
・前立腺がん:約2か月
・乳がん術後:約1か月半
このため
・遠距離通院
・家族の負担
・仕事との両立
などが大きな問題になります。
これは手術と異なり、地域格差が生じやすい理由の一つです。
放射線治療が十分に選択されていない現状
日本では放射線治療の件数は増加していますが、
まだ十分に選択されていないケースもあります。
理由として
① 地域によって治療が受けられない
医師不足の地域では、そもそも選択肢が存在しない場合があります。
② 他科で治療方針が決まる
多くの場合、放射線治療科は最初の窓口ではありません。
例
・検診 → 内科
・診断 → 外科
・必要に応じて放射線科紹介
つまり
👉 放射線治療の説明を十分に受けない可能性があります。
治療方針は医師によって偏る可能性がある
手術と放射線が同等の成績の場合
・外科医 → 手術を推奨
・放射線治療医 → 放射線を推奨
という可能性があります。
現在は多職種カンファレンスが普及して改善されていますが、
完全ではありません。
そのため
👉 患者自身の情報収集が重要
といえます。
毎日の健康管理に
放射線治療は長期間の通院になることが多く、症状の変化や副作用、医師への質問を整理しておくことが大切です。
通院の記録や体調の変化をまとめられる「だいじな体 見つめ手帳」のような専用ノートを活用すると、治療中の不安を減らし、医療者との相談もスムーズになります。
では、どこで放射線治療を受けるべきか
ここからが最も重要なポイントです。
① できれば都市部の大病院を選ぶ
可能であれば
👉 ある程度の規模の都市の大病院が望ましい
と考えられます。
理由
・症例数が多い
・専門医が多い
・多職種連携がある
ただし
・待ち時間が長い
というデメリットもあります。
② 症例数の多い施設を選ぶ
海外の研究では
👉 症例数が多い施設ほど成績が良い
とされています。
これは
・経験
・精度管理
・治療計画
などが向上するためです。
③ 常勤の放射線治療医がいるか
重要なポイントとして
👉 常勤医の有無
があります。
非常勤医のみの場合
・症例数が少ない
・緊急対応が難しい
などの可能性があります。
④ 機械の性能を確認する
放射線治療では、機械の性能が重要です。
代表的な装置
・リニアック(X線)
・粒子線治療(陽子線・重粒子線)
粒子線治療は施設が限られますが、条件が合えば選択肢になります。
世界の主要メーカー
放射線治療装置は
Varian
Elekta
などが代表的です。
新しい装置ほど
・高精度
・副作用軽減
が期待できます。
放射線治療は機械の影響が大きい分野
他の診療科に比べ
👉 技術だけでなく機械の差も結果に影響
します。
そのため
・どの機械があるか
・高精度治療が可能か
を確認する価値があります。
放射線治療医の集約化は進むのか
アメリカの研究では
・放射線治療医は増加
・小規模施設は減少
・大規模グループは増加
という傾向が報告されています。
つまり
👉 医療の集約化が進んでいます。
集約化のメリット
・高度治療が可能
・症例数増加
・研究が進む
・医師教育が向上
集約化のデメリット
・通院距離が長くなる
・交通費や宿泊費の負担
・競争の低下
患者側には負担が増える可能性があります。
都市と地方で生存率が異なる可能性
海外の研究では
地方の患者の死亡率は都会より高い
という結果があります。
理由として
・治療の休止
・通院困難
・社会的背景
などが影響しています。
治療の中断は特に重要で、
生存率に大きく影響します。
日本ではどうか
日本はアメリカほど格差は大きくありませんが、
今後は集約化が進む可能性があります。
医療費の増加
病院経営の悪化
人材不足
などが背景です。
都市部と地方のメリット・デメリット
| 地域 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 都市部 | 症例数が多い、専門医が多い、高度治療 | 待ち時間、混雑 |
| 地方 | 通院しやすい、生活の継続 | 設備・医師の偏在 |
まとめ
放射線治療医の偏在は、日本でも重要な問題です。
重要なポイントは以下です。
✔ 高精度治療は経験が重要
✔ 症例数の多い施設が望ましい
✔ 常勤医がいる病院
✔ 新しい治療機器
✔ 通院の継続が可能な環境
最終的には
👉 治療効果と通院負担のバランス
が重要になります。
もし選択できる状況であれば、
治療施設について情報を集めて検討することが大切です。
放射線治療施設を選ぶときのチェックポイント
| 項目 | なぜ重要か | 確認方法 |
|---|---|---|
| 症例数 | 経験が多いほど治療精度が安定しやすい | 病院HP・診療実績 |
| 専門医の人数 | 複数医師で安全性・質を担保 | JASTRO専門医 |
| 常勤医の有無 | 継続的な管理が可能 | 外来で確認 |
| 高精度治療の実施 | IMRTや定位治療が可能 | 設備紹介 |
| 機器の新しさ | 副作用低減・精度向上 | リニアックの機種 |
| 治療開始までの期間 | 待機時間は予後に影響 | 初診時に相談 |
| 通院距離 | 中断・疲労のリスク | 生活とのバランス |
| サポート体制 | 看護師・技師・相談窓口 | 医療相談室 |
| 多職種カンファレンス | 客観的治療方針 | 病院の体制 |
| 宿泊支援 | 遠方患者の負担軽減 | 病院窓口 |
放射線治療の費用、期間、副作用の記事はこちら
放射線治療の費用
放射線治療の期間
- 放射線治療の副作用(まとめ)
FAQ
Q1. 放射線治療はどこの病院で受けても同じですか?
必ずしも同じではありません。特に高精度放射線治療では、症例数・医師の経験・設備の違いによって治療精度や副作用、治療成績に差が出る可能性があります。
Q2. 高精度放射線治療とは何ですか?
IMRTや定位放射線治療(SRT・SBRT)など、がんに集中して放射線を照射し、正常組織への影響を抑える治療です。効果と安全性が高い一方で、正確な計画と経験が重要です。
Q3. 症例数の多い病院のほうが良いのですか?
海外の研究では、症例数が多い施設のほうが治療成績が良い傾向が報告されています。経験の蓄積や精度管理の体制が整っていることが理由と考えられています。
Q4. 放射線治療医の数は重要ですか?
重要です。常勤の専門医が複数いる施設では、治療計画の確認や緊急対応、質の維持がしやすいと考えられます。
Q5. 地方でも標準的な放射線治療は受けられますか?
多くの場合は可能ですが、専門医や高精度治療の体制が限られている地域もあります。場合によっては都市部の大病院への紹介が行われることもあります。
Q6. 治療施設までの距離は重要ですか?
重要です。海外研究では、通院距離が長いと治療中断や完遂率低下につながり、生存率に影響する可能性が報告されています。
Q7. 放射線治療はどのくらい通院が必要ですか?
がんの種類によりますが、1~2か月程度通院することが多く、生活や家族への影響も考慮する必要があります。
Q8. 大きな病院は待ち時間が長いのでは?
その可能性があります。ただし、経験豊富なチームや高度設備が整っていることが多いため、メリットとデメリットを比較して判断することが重要です。
Q9. 粒子線治療は受けたほうが良いですか?
すべてのがんに必要ではありません。適応が限られているため、主治医と相談して判断することが大切です。
Q10. 自分で情報収集することは必要ですか?
重要です。治療選択肢の提示は医師によって差がある可能性があり、患者自身も情報を集めて理解することで納得した治療につながります。
参考文献
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- PMID: 34157364
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2021.06.009
Does Bigger Practice Size Mean Better for Patients and Providers?
- PMID: 34560024
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2021.07.001
Is It Time for New Target Volumes in Radiation Oncology?
Sociodemographic and Clinical Factors Associated With Radiation Treatment Nonadherence and Survival Among Rural and Nonrural Patients With Cancer
- PMID: 35777674
- PMCID: PMC9797617
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2022.06.075





















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