日本の放射線治療の現状①:放射線治療専門医の偏在

2019年3月27日

「選択」という雑誌の2月号で、「放射線治療の暗部」ということで、日本における放射線治療の現状がクローズアップされていました。

内容はなかなか興味深く、よく調べられて書かれているなという印象です。

それを読んでみて、実際に現場で働く人間として感じる、放射線治療の現状について書いておこうと思います。

 

記事で書かれていたのは、日本では箱物ばかり多く作られ、実際にそこで働く放射線治療医が絶対的に不足しているということが触れられていました。

これは確かに問題と感じる部分ですが、私自身は比較的都市部で勤務しているため、まだ実際に人手不足に直面する場面は少ないです。

 

日本において放射線治療医がどこにいるのかというのは、JASTROのホームページの放射線治療医リストを見ると確認することができます。

専門医番号を確認すると、およそ1300人程度が登録されていますが、中には高齢であったり、実際には放射線治療医として勤務していない場合も含まれている可能性があり、実態はこれよりも少ないものと考えられます。

都道府県における医師の勤務状況ですが、東京や大阪といった大都市部には非常にたくさんの放射線治療医が勤務しています。一方で地方の医師数を見ると、秋田県7人、山形県6人、富山県9人、石川県9人、滋賀県10人、和歌山県10人、鳥取県5人、島根県7人、徳島県9人、香川県10人、高知県5人、大分県7人、沖縄県10人となっており、10人以下の都道府県も13個にのぼります。これは県全体の人数であり、一般的に大学病院や大病院に複数人の医師が配置される状況を考えると、これらの県では大病院以外では標準的な放射線治療自体が受けられない可能性を示しています。

 

もちろん、こういった状況がそのまま「悪」であるとはいえないのですが。例えばアメリカなどは日本よりも医療の集約化が進んでいるため、より極端な状況もありえると考えます。ただ、まともな治療を受けられるという医療アクセスが地域によって大きく異なるというのが現状です。アメリカの研究でも治療施設から家が離れるほうが、放射線治療の治療成績が悪くなるということが報告されています。

 

そして、思うにこのような状況は今後簡単には改善していかないだろうとも感じます。なぜならば、都市部においても放射線治療医の数が充足しているとは言えず、また放射線治療医の供給も劇的に増えるとは考えにくいからです。制度的な問題としては、より高度の治療を行うためには複数の放射線治療医を病院に配置する必要があります。このため、特に地方においてはまともな放射線治療を受けるためには、都市部への移動を余儀なくされると考えます。

 

以前に別の項目で書きましたが、放射線治療というのは比較的長期間治療に通う必要があります。前立腺癌のように長期の治療が必要な場合には2ヶ月程度、比較的よくある乳癌の術後照射でも1ヵ月半が必要です。このため、手術のように1~2週間程度入院して治療終了というわけにはいきません。それだけご本人やご家族にも負担がかかることになります。

 

このように放射線治療は特に地域格差の大きい治療といえます。

 

 

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