放射線治療の終了日を意識しすぎるのは悪影響の可能性がある

まとめ

治療最終日にベルを鳴らして祝福する群は、ベルを鳴らさない群と比較して、終了時点でのストレスが強く、その傾向は治療終了後も持続していた。

 

 解説

あまり見ることのない研究内容だったので紹介する。

この研究では、治療の終了日にベルを鳴らして祝福することが精神的にどのように影響するかを調べたものである。

研究チームはこのためにナースステーション横にベルを設置し、治療の最終日に患者がベルを鳴らせるようにし、ベルを鳴らした際には周りのスタッフが祝福するようにした。

実にアメリカ的な感じで、日本ではなかなか気恥ずかしくてできないのではないだろうかと感じる。

この研究では、最終日にベルを鳴らすことができる群と、鳴らさずに普通に終了する群にわけて、精神的なストレスをチェックした。

研究チームは最終日にベルを鳴らせるということで、それが患者の精神面にポジティブに働くだろうと考えてこの研究を設定したわけである。

こう書いてしまうと、結果はその通りに行かなかったということが分かってしまうかもしれない。

結果として、ベルを鳴らせる群のほうが、終了日時点でのストレスが強く、この傾向は治療終了後も持続したという結果で、研究者の想定したものとは真逆の結果となってしまった。

もともと想定していた結果と真逆となってしまった理由は想像するしかないのだが、研究者らはベルを鳴らすという行為が、つらかった治療と強く結びついてしまい、終了日であっても治療中の辛いイメージが想起されるのではないかと考察している。

治療終了日は大変だった治療から解放される日であり、祝福したい気持ちも分からなくはないのだが、それが逆効果になってしまったという非常に興味深い研究である。

実際に治療を行っていても、終了日を一つの目標にして治療を行うということは少なくない。

ただし、それが度を過ぎると、治療中のしんどい記憶がより強く心に刻まれてしまうのかもしれない。

治療の本来の目標は病気の治癒であり、治療期間の終了というのは一つの過程に過ぎないという見方もあるだろう。

放射線治療が終了したとしても、その後も化学療法が続くということもあるかもしれない。

治療の終了というのは、患者さんにとってはたしかに大きなイベントの一つではあるのだが、あまり意識しすぎるのは精神的に逆効果になってしまい、ストレスが増えたり負担に感じることもあるのだと知らされる印象深い結果であった。

 

参考文献

The Cancer Bell: Too Much of a Good Thing?

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