肝細胞癌治療において体幹部定位照射(SBRT)はカテーテル治療よりも優れている

まとめ

肝細胞癌、特に再発性のものについては、体幹部定位照射(SBRT)がカテーテル治療(TACE)と比較して局所制御、生存率に優れるという結果であった。

 

 解説

肝細胞癌治療において、体幹部定位照射(SBRT)とカテーテル治療(IVR、TACE)の成績を比較した研究を紹介する。

対象は中程度のサイズ(3-8㎝)の肝細胞癌の患者である。

体幹部定位照射(SBRT)は通常の放射線治療に比べて、強い線量を集中的に腫瘍に照射する方法で、短期間に治療を終えることができる手法である。

体幹部定位照射(SBRT)は肝細胞癌以外にも肺癌やリンパ節転移などでも用いられている。

今回の研究では、28-60Gyを4-5回に分けて照射している。

通常の照射であれば同程度の治療を行うのに25-30回以上の照射が必要である。

体幹部定位照射(SBRT)を用いることで、治療回数を大きく減らすことが可能である。

カテーテル治療(IVR、TACE)はカテーテルと呼ばれる器具を主に足の付け根の血管から挿入し、直接肝細胞癌の栄養血管近くまで誘導し、そこから薬剤や塞栓物質を投与する治療である。

肝細胞癌は正常の幹細胞とは栄養血管が異なるため、カテーテル治療はがん細胞を選択的に攻撃することが可能な治療である。

カテーテル治療は比較的古くから行われてきた治療であり、肝細胞癌の治療においてはメジャーな治療方法である。

今回の研究ではこの2つの治療方法の成績を比較しているもので、結果として、体幹部定位照射(SBRT)群でカテーテル治療群と比較して、局所制御、生存率が有意に優れているという結果であった。

さらに細かい分析では、新規の肝細胞癌においては両群で治療成績に差は見られず、再発の肝細胞癌で体幹部定位照射(SBRT)群が優れているという結果であった。

肝細胞癌、特にC型肝炎を基礎とする肝細胞癌の場合は再発を繰り返すことも多く、そのような場合には体幹部定位照射(SBRT)での治療も十分に考慮されると考えられる。

近年では薬物療法の発達もあり、肝細胞癌じたいの発生も減ってきている印象であり、再発を繰り返す肝細胞癌も今後は過去の話になってしまうのかもしれないが、再発性の肝細胞癌においては体幹部定位照射(SBRT)を積極的に考慮しても良いと後押しできる結果であると思われる。

 

参考文献

Comparison of Stereotactic Body Radiation Therapy and Transarterial Chemoembolization for Unresectable Medium-Sized Hepatocellular Carcinoma

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