縦隔病変に対する高線量放射線照射
まとめ
解説
最近の放射線治療においては、定位照射(SBRT)を用いて短期間で高線量を投与する治療も広がってきている。
末梢型肺癌などであれば、定位照射による治療の有効性も多く報告されている。
いっぽうで、縦隔のような体の中心部に近い部位に対する放射線治療においては、気管や大血管といった重要臓器が存在し、副作用の観点から高線量を投与するのが困難である。
このような部位に高線量を投与すれば、血管の損傷や気管出血、重篤な肺炎といった致死的な合併症が問題となる。
今回の研究では縦隔病変に対する高線量投与の安全性・有効性を検討したものである。
この研究においては、おもに縦隔への転移病変を治療対象としており、原発病変は多い順に、腎癌、肺癌、乳癌、その他であった。
普段の臨床で腎癌の縦隔転移を見る機会があまりないため、このような内訳になるのは意外でもある。
実際の治療は5回照射で行われ、総線量は30-50Gyで、中央値は35Gyであった。
Grade 3以上の副作用は約11%の患者に見られ、多くの場合は一過性のものであった。
1例のみGrade 5(=死亡)の副作用が見られた。
治療成績はおおむね良好で、十分な局所制御が得られていた。
結果として、縦隔病変に対する定位照射(SBRT)として、35Gy/5回程度の治療は十分な治療効果が期待でき、重篤な副作用も少なかった。
実際の臨床においても縦隔に対して高線量を投与できれば良好な予後が期待できるような症例は少なくない。
そういった意味で、今回の結果は充分に有用であると考えられる。
今回の研究における投与線量(35Gy/5回)はどちらかというと姑息照射でも使われることがあるぐらいの線量であり、可能であればもう少し高線量投与も考慮したいところであるが、副作用の観点からはあまり無理もできないのが現実であろう。
ただ、今回の結果は縦隔におけるオリゴ転移に対する定位照射の良い指標になるものと考える。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません