食道癌に対する照射範囲も今後狭くなっていくのではないだろうか

まとめ

食道癌の化学放射線治療において、病変部のみに限局した照射でも良好な治療成績が得られており、予防的なリンパ節照射は不要な可能性がある。

 

 解説

食道癌における放射線治療では、照射野がそれなりに広くなるのが一般的である。

よく見られる胸部中部食道癌における一般的な照射野では、頸部から心窩部(みぞおち)に至るまでの範囲が照射野に含まれる。

これは食道癌は他の癌と比較して比較的早期からリンパ節転移などをきたしやすく、実際の病変よりも広い範囲を照射する必要があるからである。

しかしながら、最近のトレンドとして、照射野を病変部が存在する部分のみに限局して治療を行う方法(IFI;Involved field irradiation)が広まりつつある。

これはリンパ腫や肺癌などで用いられだしだ方法である。

現時点で転移は無いが、将来的に転移が出現する可能性のある、いわゆる予防的リンパ節領域に対して放射線照射を行うのはこれまで一般的であった。

しかしながら、この予防的リンパ節領域を照射すると、当然ながら照射野が広くなってしまい、そのぶん副作用が強くなってしまうというデメリットがある。

食道癌においては、特に近傍に心臓や肺が存在するため、副作用を低減することは致死的な合併症の発生を抑制し、その後の健康寿命に大きく影響すると考えられる。

リンパ腫や肺癌においてはこれまでの研究で、照射野を病変部に限局しても治療成績が劣らなかったという結果が報告されている。

今回の研究では、食道癌に対する化学放射線療法において、同様にIFIを用いることで治療成績が変わるのかどうかを検討したものである。

結果として、IFIにおいてリンパ節再発の頻度は低く、予後も問題ないという結果であった。

この要因としては、以前の研究の際と比較して化学療法の進歩があると考えられる。

以前よりも化学療法での腫瘍制御が改善したことで、早期のリンパ節転移が抑制され、予防的リンパ節領域を照射しなくとも腫瘍を制御することができるようになったのではないだろうか。

今後、食道癌の化学放射線療法において予防的リンパ節領域を照射することは過剰な治療になる可能性があり、副作用の低減という観点からも、限局した照射野へと移行していく可能性が高いのではないかと考える。

参考文献

Involved-Field Irradiation in Definitive Chemoradiotherapy for Locoregional Esophageal Squamous Cell Carcinoma: Results From the ESO-Shanghai 1 Trial

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