VMATを用いた緩和照射はQOLの維持に貢献する
まとめ
解説
放射線治療は様々な状態の症例に対して治療を行う。
病期を治すことを目的とする場合は根治照射と呼ばれ、疼痛などの症状緩和の目的の治療を緩和照射や姑息照射などと呼ばれる。
緩和照射は病気の治癒を目的としているわけではないため、根治照射と比べると患者の状態も悪く、その後の生命予後も長いとは言えない。
このため、いかにQOL(生活の質)を保ちながら治療を行うかというのがより重要になってくる。
今回の研究では通常の照射とVMATという手法を用いた高精度照射とで、緩和照射における効果を比較したものである。
VMATは強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる治療法の一種であり、目的の病変に線量を集中させるいっぽうで、周囲の正常臓器への線量を減らして治療をすることができる。
この論文の中ではVMATについてのみ言及されているが、他のIMRTを用いた治療でも同様の結果になると考えられる。
結論として、疼痛コントロールといった治療効果については通常照射とVMATで差は見られなかったが、QOLについてはVMATのほうでより維持されており、通常照射ではQOLが落ちるというものであった。
VMATが周囲の正常組織の線量を少なくして治療できる方法であるため、これが副作用の低減に影響し、結果としてQOLが維持されたと考えることができる。
これまでにもオリゴ転移に対する高精度照射の有用性については報告されており、このサイトでもいくつかの論文を紹介したことがある。
しかしながら、現時点の日本においては緩和照射において積極的に高精度照射を採用される場面というのは少ないのではないかと考えられる。
もちろんすべての病院の状況を把握しているわけではないが、オリゴ転移でないような症例で、高精度照射を採用する施設は稀であろう。
これは保険のからみもあり、多発転移を有する場合、高精度照射を行っても、高精度照射の保険点数が適応されず病院側の持ち出しになってしまうため、積極的に採用されないという現状もあるのではないかと思われる。
すべての症例で高精度照射を保険適応にしてしまうと医療財政を圧迫するという側面もあるであろうが、有用な治療を気兼ねなく選択できる未来になれば良いと願うばかりである。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません