肝臓転移に対する単回照射の可能性

まとめ

肝臓転移に対する単回の高線量投与は、対象患者を十分に検討すれば、良好な治療成績であり安全に施行できる。

 

 解説

前回記事に関連する内容になるが、肝臓転移に対する放射線治療の話題である。

体幹部定位照射(SBRT)という手法は同様であるが、今回は治療回数は1回の照射となる。

前回紹介した治療回数も、通常の治療に比べると十分に少ないわけだが、今回は1回のみで治療は終了しており、1回で35-40Gyという高線量を投与する。

メリットはもちろん短期間で終了することと、通常に照射するよりもより強力な治療になるということである。デメリットとしては強力な治療となる反面、正常組織への影響も無視できない部分がある。

今回のような肝臓への照射では大血管に高線量を投与すると、血管が破綻して致死的になるあるいは血管閉塞による末梢の正常肝組織の壊死などが問題になる。

このため、この研究では大血管近傍の病変を有する症例については単回照射の適応にはなっていない。

この研究では35Gy投与からはじめて、症例が蓄積されるとともに40Gyまで線量を増加している。

結果として、中央値で2年程度の観察期間で良好な治療成績が得られており、重篤な合併症も見られなかった。

放射線治療医からすると単回の40Gy投与はなかなか驚愕する線量ではあるが、これだけの高線量投与でも十分安全に治療できるというのは興味深い結果である。

日本でここまでの高線量投与を一般臨床レベルで行うのはまだまだ先の話ではあるが、海外では高線量での短期治療はかなり進んできている印象であり、今後日本でも広がりを見せていくものと考えられる。

 

参考文献

Long-Term Results of a Phase 1 Dose-Escalation Trial and Subsequent Institutional Experience of Single-Fraction Stereotactic Ablative Radiation Therapy for Liver Metastases

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