肝細胞癌に対する陽子線治療の有効性

目次

1:肝細胞癌に対する陽子線治療
2:陽子線治療とX線治療の比較
3:参考文献

肝細胞癌に対する陽子線治療

一般的な放射線治療はX線を用いて行われますが、最近ではX線ではなく粒子線を使った治療を行う施設も少しずつ増えてきました。

粒子線治療は大きく陽子線治療と重粒子線治療に分かれます。

重粒子線は炭素線などを用いて治療を行いますが、施設がかなり広大になり、また電力消費も非常に多くなります。

それに比べると陽子線治療はまだ治療の機械もコンパクトであり、都会で敷地が限られるような状況でも導入しやすいと言えます。

陽子線治療のメリットは、一般的に用いられるX線と比較して腫瘍の周囲にある正常組織への線量を減らすことができる点です。

つまり、X線と同等の治療を行っても、副作用を減らすことが可能になるということです。

そのような特性を生かして、肝細胞癌の治療においても陽子線治療が選択される場合があります。

陽子線治療とX線治療の比較

今回は肝細胞癌の治療において、陽子線治療とX線治療での治療成績を比較した研究を紹介します。

この研究は単施設研究で、133例を対象としています。

結果として、陽子線治療群では全生存期間の中央値が31ヶ月でしたが、X線治療群では14ヶ月でした。

24ヶ月時点での生存率は陽子線治療群で59.1%であったのに対して、X線治療群では28.6%でした。

また、放射線治療に伴う副作用についても、陽子線治療群では有意に少ないという結果でした。(オッズ比 0.26)

この放射線治療後の副作用に関しては、治療後3か月時点での副作用の発生により、有意に生存率が悪化するという結果でした。(オッズ比 3.83)

陽子線治療群とX線治療群では、腫瘍の再発や局所制御に関して有意な差は見られませんでした。

これらの結果から考えられることは、陽子線治療群では腫瘍に対する効果じたいはX線治療群と大差ないものの、治療後の副作用を軽減することが可能であり、それが結果として生存の改善に寄与していると言えます。

肝臓は一部の組織がダメになっても、他の領域でカバーすることのできる臓器ですが、この結果からは、やはり正常組織のダメージというのはできる限り少ないほうが望ましいということだと思います。

参考文献

Protons versus Photons for Unresectable Hepatocellular Carcinoma: Liver Decompensation and Overall Survival

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