膵がんの放射線治療は効果がある?最新研究からわかること
膵がんは、手術・抗がん剤・放射線治療を組み合わせる「集学的治療」が重要ながんです。
特に最近は、手術前に放射線治療を行う方法(術前治療)が注目されています。
この記事では、最新の臨床試験をもとに、
膵がんにおける放射線治療の役割をわかりやすく解説します。
結論:膵がんの放射線治療は有効な場合がある
現在の研究結果をまとめると、
✔ 術前に化学放射線療法を行うことで
・再発を遅らせる効果
・完全切除率の向上
・リンパ節転移の減少
が期待できる
✔ ただし、すべての患者さんで有効とは限らない
✔ 症例ごとの適切な選択が重要
という状況です。
膵がんで放射線治療が検討される理由
膵がんは以下の特徴があります。
・発見時に進行していることが多い
・周囲の血管に近く、手術が難しい
・手術後の再発率が高い
そのため、近年は
👉 手術の前に治療を行い、がんを小さくする
👉 微小な転移を抑える
という戦略が重視されています。
術前化学放射線療法と即時手術の比較
切除可能膵がんに対して、
手術前に化学放射線療法を行う場合と、すぐに手術を行う場合を比較したランダム化比較試験があります。
治療内容
術前化学放射線療法群
・放射線治療:36Gyを15回
・抗がん剤:ゲムシタビン併用
・手術後もゲムシタビンを継続
即時手術群
・まず手術
・その後ゲムシタビン治療
研究結果
✔ 全生存期間
・術前治療群:16か月
・即時手術群:14.3か月
→ 統計的な有意差はなし
✔ 無病生存期間
→ 術前治療群で有意に延長
✔ 切除率
・術前治療群:72%
・即時手術群:61%
→ 有意差なし
✔ 完全切除(R0切除)
→ 術前治療群で有意に高い
✔ リンパ節転移
→ 術前治療群で有意に少ない
この研究の意味
全体として、
👉 術前化学放射線療法のほうが
・再発を抑える
・完全切除を増やす
という結果でした。
そのため、
切除可能または境界切除可能膵がんでは、術前治療が積極的に検討されます。
PREOPANC試験:長期成績の重要な研究
膵がんの術前放射線治療を語るうえで重要なのが、PREOPANC試験です。
この研究では、
・切除可能
・境界切除可能
の膵がん患者が対象となりました。
治療方法
■ 標準治療群
・ゲムシタビン6サイクル
・その後手術
■ 術前化学放射線療法群
・放射線:36Gy/15回
・ゲムシタビン併用
・その後手術
初期報告(観察27か月)
✔ 全生存率
→ 有意差なし
✔ しかし
・R0切除率
・無増悪生存率
・局所制御
は有意に改善
最新報告(観察59か月)
長期フォローでは、
✔ 全生存率も有意に改善
✔ 3年生存率
・標準治療:16.5%
・術前治療:27.7%
✔ 5年生存率
・標準治療:6.5%
・術前治療:20.5%
という結果でした。
研究の注意点(limitation)
この研究には以下の制約があります。
・術前治療群でドロップアウトが多い(24%)
・CA19-9が除外基準になっていない
・現在はゲムシタビン単剤は標準治療ではない
・定位放射線治療(SBRT)など最新技術が反映されていない
つまり、
現在の医療ではさらに良い結果が得られる可能性もあります。
放射線治療が有効でなかった研究もある
一方で、異なる結果の研究もあります。
境界切除可能膵がんを対象にした試験では、
■ グループ1
・FOLFIRINOXを8サイクル
・その後手術
■ グループ2
・FOLFIRINOX 7サイクル
・その後放射線治療
・手術
結果
この試験は早期終了となりました。
理由は、
✔ 放射線治療を追加した群で成績が不良だったためです。
・治癒切除
グループ1:17/30
グループ2:10/30
・1年生存率
グループ1:66.7%
グループ2:47.3%
期待された結果とはならず、
大きな議論を呼びました。
なぜ結果が異なるのか?
現在考えられている理由として、
・患者選択の違い
・抗がん剤の種類
・放射線治療の方法
・治療タイミング
などが挙げられます。
つまり、
👉 放射線治療が悪いのではなく
👉 どの患者さんに使うかが重要
と考えられています。
現在の考え方:個別化治療の時代
現在の膵がん治療では、
✔ すべての患者に放射線を行うわけではない
✔ 血管浸潤や局所進行がある症例で有用
✔ 完全切除が難しい症例で特に重要
とされています。
今後の展望
現在は以下の研究が進んでいます。
・定位放射線治療(SBRT)
・より強力な抗がん剤との併用
・免疫治療との組み合わせ
・バイオマーカーによる治療選択
今後は、
より効果的な治療戦略が明らかになる可能性があります。
膵がんの放射線治療:メリットと注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な目的 | 手術前にがんを小さくする |
| 再発予防 | 再発を遅らせる可能性 |
| 完全切除 | R0切除率の向上 |
| 適応 | 境界切除可能・局所進行 |
| 治療期間 | 約3〜5週間 |
| 入院 | 多くは通院で可能 |
| 副作用 | 吐き気、疲労、胃腸症状 |
| 新しい治療 | SBRT、免疫療法併用 |
| メリット | 手術成功率の向上 |
| 注意点 | すべての患者に有効ではない |
まとめ
✔ 膵がんの術前放射線治療は有効な可能性がある
✔ 再発抑制や完全切除率の向上に寄与
✔ ただし結果は研究により異なる
✔ 患者ごとの適切な治療選択が重要
✔ 今後の研究が期待されている
膵がんは治療が難しいがんですが、
近年は治療成績が少しずつ改善しています。
放射線治療もその重要な選択肢の一つです。
放射線治療の副作用の記事はこちら
放射線治療の食事についてはこちら
放射線治療中にあって良かったもの
膵がんの放射線治療 FAQ
Q1. 膵がんに放射線治療は本当に効果がありますか?
膵がんでは、放射線治療が有効な場合があります。
特に、手術の前に行う「術前化学放射線療法」は、
・再発を遅らせる
・完全切除率を高める
・リンパ節転移を減らす
などの効果が期待されています。
一方で、すべての患者さんに効果があるわけではありません。
そのため、現在は患者さんの状態や腫瘍の広がりに応じて治療を選択する「個別化医療」が重視されています。
Q2. 膵がんで放射線治療が勧められるのはどんな場合ですか?
一般的には次のようなケースで検討されます。
・境界切除可能膵がん
・血管に近く、手術が難しい場合
・局所進行膵がん
・手術後の再発リスクが高い場合
また、手術前に行うことで腫瘍を小さくし、より安全な手術につながる可能性があります。
Q3. 手術だけではだめなのでしょうか?
膵がんでは、手術だけでは再発する可能性が高いことが知られています。
そのため現在は、
・抗がん剤
・放射線治療
・手術
を組み合わせた治療(集学的治療)が標準となっています。
近年の研究では、手術前に治療を行うことで長期生存率が改善する可能性が示されています。
Q4. 放射線治療には副作用がありますか?
副作用はありますが、多くの場合は一時的です。
代表的なものとして、
・疲れやすさ
・食欲低下
・吐き気
・胃腸症状
などがあります。
最近では、精度の高い放射線治療(定位放射線治療など)により、副作用を抑えながら治療できるようになっています。
Q5. 膵がんの放射線治療は将来さらに進歩しますか?
現在も多くの研究が進んでいます。
・定位放射線治療(SBRT)
・免疫療法との併用
・より強力な抗がん剤との組み合わせ
・バイオマーカーによる個別化
これらにより、今後さらに治療成績が改善する可能性があります。
参考文献
Preoperative Chemoradiotherapy Versus Immediate Surgery for Resectable and Borderline Resectable Pancreatic Cancer: Results of the Dutch Randomized Phase III PREOPANC Trial
Hits and Misses in Novel Pancreatic and Rectal Cancer Treatment Options
Michael D Chuong 1 , Christopher J Anker 2 , Michael H Buckstein 3 , Maria A Hawkins 4 , Jordan Kharofa 5 , Ann C Raldow 6 , Nina N Sanford 7 , Andrzej Wojcieszysnki 8 , Jeffrey R Olsen 9
Affiliations
PMID: 36725162
DOI: 10.1016/j.ijrobp.2022.10.022




















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