中絶と放射線治療について①

目次

1:アメリカにおける中絶について
2:中絶と放射線治療の関係
3:妊娠とがん治療①
4:参考文献

アメリカにおける中絶について

少し前にアメリカで中絶に関する法律が50年ぶりぐらいに変更となったようで、放射線治療領域においてもこの件が話題となっていました。

最初は中絶と放射線治療がどのように影響するのかピンとは来なかったのですが、論文を読んでいくと様々な部分に影響が出てくるようで意外と深刻な問題となっています。

アメリカの法律の詳しい部分については他のサイトの解説に譲りますので、気になる方はドブス判決などで調べてもらうと良いと思います。

簡単に説明すると、これまではアメリカでは中絶に関する基準は国全体で決まっていましたが、これからは州それぞれが独自に制定した基準によって決まるというものです。

これによって、極端な話、中絶が全く認めらない州が出てくる可能性があります。

特にテキサスのような比較的保守的な州においては、いかなる中絶も認めないという傾向になる可能性が危惧されています。

中絶と放射線治療の関係

中絶と放射線治療あるいはがん治療は意外と重要な関係にあります。

中絶の可能性が議論される状況にあるわけなので、妊娠中の状況になります。

つまり妊娠中に癌が見つかった状況です。

実はこれはそこまで稀な状況ではなく、約1000例に1例と報告されています。

これを稀と感じるかどうかは人によって違うかもしれませんが、私は意外に多いなと思いました。

日本では出生数が年間で約80万人ですが、単純に考えるとそのうちの800例で癌を合併しているということになります。

最近では出産も高齢化してきており、そうすると癌の合併リスクはより高くなることが危惧されます。

妊娠中に見られる悪性腫瘍で多いものは、子宮頚癌、乳癌、メラノーマなどです。

そして、妊娠中というのは癌治療が非常に難しくなります。

 

妊娠とがん治療①

まず抗癌剤を使うことが難しいです。

抗癌剤は非常に細胞毒性が強い薬なので、胎児への影響が当然ながら無視できません。

また、放射線治療も難しいです。

これは医学生なら必ず学習することですが、妊娠中の放射線被ばくは奇形などの重篤な副作用が発生するため、十分に注意が必要です。

特に、放射線治療は通常のCTやレントゲンといった診断に使う線量とは比べ物にならない量が照射されるため、基本的に妊娠中に放射線治療を行うことはできません。

長くなってきたため、続きは次回に書きたいと思います。

参考文献

Limiting Access to Abortion Will Potentially Harm Patients With Gynecologic Cancers

Affiliations

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