難治性振戦に対する非侵襲的な視床への放射線治療の有効性

目次

1:振戦とは
2:振戦に対する放射線治療
3:まとめ
4:参考文献

振戦とは

今回の話題は癌治療ではありません。

難治性の振戦に対して、視床への放射線照射が有効かどうかを検討した研究です。

振戦とは簡単に言えば手のふるえのことです。

比較的よく見られるものは本態性振戦と呼ばれるもので、加齢によって一定の割合で起こってくるものです。

その他の振戦としては、パーキンソン病に伴うものがあります。

一般的に65歳以上で本態性振戦であれば約5%に、パーキンソン病であれば約2%に見られるとされています。

手のふるえはなかなかやっかいな症状であり、薬が効けば良いのですが、なかなか効かなかったり、しばらく効果があってもまた再発してくるパターンなどがあります。

手のふるえがあると日常生活においても制限が出てくるため、生活の質(QOL)を下げる大きな要因となります。

振戦に対する放射線治療

今回紹介する研究では、難治性の振戦に対して放射線治療を用いることで症状の改善が見られるかどうか検討しています。

この研究では、片側の視床に対して、最大で160Gyを照射しています。

160Gyは放射線治療に用いる線量としてはかなり多いものになり、この線量が照射された領域の細胞はほぼ死滅する量になります。

症例は23例の本態性振戦患者と、10例のパーキンソン病患者を対象に行われました。

結果として、治療後3か月時点で、振戦の症状スコアが約20%と有意に減少しており、6か月時点では約40%の有意な減少が見られました。

QOLについては、本態性振戦の患者で、治療後6か月時点で57%に有意な改善が見られました。

いっぽうで、パーキンソン病患者群においては、QOLには有意な改善は認めませんでした。

まとめ

まだ観察期間が1年程度と短い研究ではありますが、この研究において、難治性の振戦に対する、視床への放射線照射の有効性が示されました。

放射線治療は手術と異なり、侵襲性の低い治療であり、手術困難な症例で、難治性の振戦に悩むような場合には、放射線治療もひとつの選択肢になり得ると考えます。

参考文献

Noninvasive Thalamotomy for Refractory Tremor by Frameless Radiosurgery

Affiliations

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