最近の美容皮膚科をとりまく状況について思うこと

最近の美容皮膚科に関する話題

最近、個人的に気になっているのは美容皮膚科に関する話題です。

具体的には美容皮膚科の人気の高まりによって、医学部を卒業したばかりの研修医や、あるいは他の専門科に進んだ医師が、美容皮膚科を希望するケースが多くなっているという話です。

私の知り合いが受診した美容皮膚科では以前は脳神経外科をされていた先生が施術していました。

なぜ人気なのかというと単純に給与が良いからという点が大きいと思います。

美容皮膚科は自由診療となるため、通常の保険診療とは異なり、実施者が費用を決定することができます。

通常の保険診療は厚労省の定めた範囲でしか請求できませんが、自由診療ではそういう制限がありません。

そのため、保険診療を行うよりも利益を得やすいという側面があります。

また、美容皮膚科は病院などで勤務するのと違って、病棟管理や当直などはありません。

病棟や当直業務があると自分の自由にできる時間が必然と少なくなりますが、そういう業務から解放されることで自分の時間が持ちやすくなります。

このようなメリットが注目されることで、美容皮膚科を志望する医師が増えているのではないかと思われます。

 

美容皮膚科の需要の高まり

ただ、このような傾向というのは以前から続いていると私は思います。

私が研修医になるときにも美容皮膚科を最初から目指している人はいましたし、同様の傾向で言えば、眼科や精神科志望の学生もいました。

最近、特に注目されるようになってきたのは美容皮膚科の需要の高まりが背景にあるのかもしれません。

インスタグラムをはじめとしたSNSでは美容皮膚科の宣伝が盛んですし、日本よりも活発な韓国にわざわざ渡航をして施術を受ける人も少なくありません。

そのような需要の高まりを受けて、美容皮膚科の求人情報もひっきりなしに流れてくる状態です。

もちろん私の現在の収入よりもだいぶ良い条件となっています。

需要があり、高給も約束されているとなると、美容皮膚科を目指す人が増えるのも仕方のないことかなと感じています。

何のために医者になったのだ、と言う人もいるかとは思うのですが、私自身は医師が給与を含めた待遇を重要視することはおかしいことだとは考えていません。

本来、職業というのは需要と供給の上に成り立っているものであるので、それだけの高給を提示しても成り立つのであれば、それに見合った需要が存在するわけなのです。

逆に言えば、現在の保険診療のほうがいびつな状態にあると言えます。

保険診療の是非について議論をするとより複雑になってしまうのでここではあまり触れませんが。

 

今後はどのようになっていくのか

では、この傾向がこのまま続いて、多くの医師が現在の専門科を捨てて美容皮膚科へ転向していく未来があるのかというと、私はそうでは無いと感じています。

おそらく厚労省も現在の状況を十分に把握していると思われ、好ましい状態ではないと考えていると思います。

理想的には、現在の保険診療の点数を挙げ、保険診療が自由診療と同等以上に魅力的な仕事環境となることが望ましいですが、これはまずありえないでしょう。

そんなことをしてしまうと、医療費が膨大となってしまい国民皆保険制度が破綻してしまうからです。

現在ですら国の財政に占める医療費の多さは大きな問題となっており、これ以上に医療費を増やす余地はありません。

私は日本の皆保険制度は非常に優れた制度だと考えていますし、アメリカのような保険制度に一度移行してしまうと将来的に元に戻したくなってもほぼ不可能になってしまいます。

では現実的にはどのようになるかという個人的な予想ですが、美容皮膚科関連の自由診療の費用を抑制する方向に動くのでは無いかと考えます。

最終的には現在の歯科のように、美容皮膚科領域を医学部から切り離した、新たな資格職として位置付けるような形に持っていくのではないかと予想しています。

医師では無い新たな資格職が参入できるようにすることで価格崩壊を起こし、結果として自由診療の費用を下げることができます。

ご存知のように現在では歯科はコンビニよりも多くなって、利益を上げるのがなかなか難しい状態となっています。

将来的に美容皮膚科もそのような状況になるかもしれません。

ただ、仮にそのような状況になるとしても、そこまで移行するには相当の期間が必要になりますから少なくとも5年程度は現在の美容皮膚科人気は続くのではないかと思います。

もちろんそれ以降も美容皮膚科の人気が維持される可能性も充分にあるわけで、将来のことは我々末端の医師には窺い知ることはできません。

医師にとっては短期の収入を優先して美容皮膚科に飛び込むのか、将来的な視点から現在のキャリアを維持するのか悩ましい状況にあると思います。

 

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