前立腺癌に対する定位放射線治療後のPSAの変化
目次
1:SBRT後のPSAの変化は?
2:PSAバウンスとは
3:nadir PSAは治療後再発の指標になる
4:参考文献
SBRT後のPSAの変化は?
前立腺癌に対して体幹部定位照射(SBRT)治療を行った後のPSAの変化を報告した論文を紹介します。
まずSBRTとは通常の放射線治療よりも1回の照射量を多くして治療期間を短縮して治療する方法です。
通常の放射線治療であれば35~39回程度が必要ですが、SBRTでは5~7回程度で治療が終了します。
まだまだ新しい治療なので、実際に日本で実施されている施設はそこまで多くないと思います。
この論文では35~40Gyを5回に分けて照射した症例を集めて検討しています。
治療後に最もPSAが低くなった状態をnadir PSAと呼びますが、そこにいたるまでに必要であった期間は平均で40か月でした。
およそ3年程度かかることになり、それなりに長期間が必要であることがわかります。
ちなみにこの研究では放射線治療後にホルモン治療を施行した症例は除外されているため、単純に放射線治療のみでPSAが下がった症例に限定しています。
PSAバウンスとは
前立腺癌治療の経過で、経過観察を続けていると、一次的にPSAが上昇することがしばしば経験されます。
これは癌が再発しているわけではなく、一過性にPSAが上昇しているだけです。
このため、PSAが一時的に上昇してもまた低下していきます。
この現象をPSAバウンスと呼びますが、PSAが上昇するため再発との区別が難しいです。
このため、PSAが上昇しても、一時的なのか、その後も持続して上昇するのかしばらく様子をみる必要があります。
急いで治療をしてしまうと、治療の必要のない人に無駄な治療をしてしまうことになるからです。
今回の研究では約26%の症例でこのPSAバウンスが見られました。
またPSAバウンスが見られた時期は、平均で治療後18ヶ月でした。
およそ1年半で見られることが多いようです。
PSAバウンスはそこまで珍しい現象ではなく、しばしば起こるため注意が必要です。
nadir PSAは治療後再発の指標になる
この論文ではnadir PSA、つまり最も下がったPSAの値が低いほど、再発しにくかったと報告しています。
平均のnadir PSAは0.2 ng/mlでした。
前立腺癌においては治療後のPSAが最も鋭敏な再発の指標となります。
SBRT後に十分にPSAが下がりきらないようであれば、その後の再発により注意が必要です。
逆にある程度PSAが下がって維持できているようであれば、再発についてはそこまで心配しなくても良いといえます。
参考文献
Multi-Institutional Analysis of Prostate-Specific Antigen Kinetics After Stereotactic Body Radiation Therapy
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