脳転移リスクの高い非小細胞肺癌患者に対する予防的全脳照射において有意なQOLや認知機能低下は認めなかった

まとめ

脳転移リスクの高い非小細胞肺癌患者に対する予防的全脳照射において、有意なQOLや認知機能低下は認めなかった。

 

 解説

以前の記事でも触れたが、脳転移リスクの高い非小細胞肺癌においては予防的全脳照射がその後の予後を改善する可能性があることが報告されている。

今回の研究では、非小細胞肺癌に対する予防的全脳照射においてQOLや認知機能がどの程度影響されるのかを検討している。

ここで言う脳転移の高リスク群は、診断時に以下の項目のうち1つ以上にあてはまるものである。

腺癌、EGFRあるいはALKの遺伝子を有する、CEA上昇(20以上)。

対象は研究に組み込まれる前に治療を受けておらず、組み込まれたのちにランダムに全脳照射群とコントロール群に分けられる。

予防的全脳照射は25Gyを10回に分けて照射を行った。

結果として予防的全脳照射群とコントロール群でQOLや認知機能低下について有意な差は見られないという結果であった。

また、予防的全脳照射を行った群ではその後の脳転移の発生率が少なく、生存期間も延長していた。

以前の論文でも触れたように、非小細胞肺癌においても脳転移のリスクが高い患者群においては予防的全脳照射が有効であることが報告されてきている。

これまでは小細胞肺癌での予防的全脳照射は広く行われていたが、非小細胞肺癌においてもその流れができてくるのかもしれない。

そのうえで、今回の研究はQOLや認知機能障害に有意差が見られなかったというのは非常に有用な結果であると考えられる。

通常、全脳照射を行った場合には1年前後で徐々に認知機能障害が出てくることが多く、その後のQOL低下につながることは広く知られている。

予防的全脳照射を行わなかった群では脳転移の発生率が高かったことから、脳転移の進行が認知機能障害につながり、結果として両群で差が無い結果となった可能性もあるのかもしれない。

また、認知機能障害を避けるこころみとして、海馬を避ける形での照射が有効という報告もあるが、実際に行う場合には高精度照射が必要となるため、すべての施設で適応できる治療法というわけではない。

 

参考文献

Prophylactic Cranial Irradiation in Patients With High-Risk Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer: Quality of Life and Neurocognitive Analysis of a Randomized Phase II Study

広告