【前立腺がんの放射線治療(IMRT)の副作用】 原因・頻度・予防・治療・治療後の注意点まで専門医が解説

2019年4月2日

前立腺がんの放射線治療を検討する際、多くの患者さんが気にされるのが副作用です。

「頻尿になるのではないか」
「排便に影響が出るのではないか」
「性機能に影響はあるのか」

このような疑問を持つ方は少なくありません。

実際に、前立腺は膀胱・尿道・直腸に囲まれた臓器であるため、放射線治療ではこれらの臓器に影響が及ぶことがあります。

しかし現在は、

  • IMRT(強度変調放射線治療)
  • IGRT(画像誘導放射線治療)
  • 直腸スペーサー

などの技術の進歩により、以前より副作用は大きく減少しています。

この記事では、放射線治療専門医の立場から

  • 前立腺がん放射線治療で起こる副作用
  • 副作用が起こるタイミング
  • 副作用を減らす最新の治療技術

について、最新の研究やガイドラインを踏まえて解説します。


前立腺がんの放射線治療について全体を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

前立腺がん放射線治療の完全ガイド


前立腺がん放射線治療の副作用とは

放射線治療は、高エネルギーの放射線を用いてがん細胞のDNAを損傷させることで、がんを制御する治療法です。

前立腺がんに対しては

  • 外照射(IMRTなど)
  • 小線源治療(ブラキセラピー)

などの方法が用いられます。

前立腺は骨盤の中央に位置し、周囲には次の臓器があります。

  • 膀胱
  • 尿道
  • 直腸
  • 神経血管束(性機能に関わる)

そのため放射線治療では、前立腺だけでなく周囲臓器にも一定の線量が当たる可能性があります。

これにより

  • 排尿症状
  • 排便症状
  • 性機能障害

などの副作用が起こることがあります。

ただし重要なのは、多くの副作用は軽度であり、時間とともに改善することが多いという点です。


前立腺がん放射線治療で起こる主な副作用

前立腺がんの放射線治療では、主に次の3つのタイプの副作用がみられます。

  1. 排尿症状
  2. 排便症状
  3. 性機能障害

これらは前立腺の解剖学的位置と密接に関係しています。


排尿症状(頻尿・尿意切迫・排尿痛)

もっともよくみられる副作用が排尿症状です。

前立腺は尿道を取り囲むように存在しているため、放射線による炎症が生じると尿道や膀胱にも影響が出ることがあります。

代表的な症状には次のようなものがあります。

  • 頻尿
  • 尿意切迫
  • 排尿時痛
  • 残尿感
  • 夜間頻尿

多くの場合、症状は治療開始後数週間で出現し、治療終了後に徐々に改善します。

前立腺肥大症をもともと持っている患者さんでは、症状が強く出ることがあります。


排便症状(下痢・直腸炎・血便)

前立腺のすぐ後ろには直腸があります。

そのため放射線治療では、直腸粘膜に炎症が生じることがあり、これを放射線性直腸炎と呼びます。

主な症状は次の通りです。

  • 軟便
  • 下痢
  • 排便回数の増加
  • 直腸の違和感
  • 血便

多くは軽度で一時的な症状ですが、まれに治療後しばらくしてから出血などが起こることもあります。

近年は

  • IMRT
  • 直腸スペーサー

などの導入により、直腸への線量を大きく減らすことが可能になっています。


性機能障害(勃起障害)

前立腺の周囲には、勃起に関係する神経血管束が走行しています。

放射線治療ではこの神経に影響が及ぶ可能性があり、勃起機能の低下がみられることがあります。

ただし放射線治療の場合、

  • 徐々に機能が低下するケースが多い
  • 薬物治療(PDE5阻害薬)で改善する場合がある

という特徴があります。

年齢や基礎疾患(糖尿病・高血圧など)も、性機能に大きく影響します。


副作用はいつ起こる?急性期副作用と晩期副作用

放射線治療の副作用は、大きく

  • 急性期副作用
  • 晩期副作用

の2つに分類されます。

この違いを理解することは、治療の見通しを持つうえで非常に重要です。


急性期副作用(治療中〜治療後数週間)

急性期副作用は、治療中から治療終了後数週間以内に起こる副作用です。

主な症状は

  • 頻尿
  • 排尿痛
  • 軟便
  • 下痢

などです。

これは放射線によって粘膜に一時的な炎症が起こることが原因です。

多くの場合、

治療終了後数週間〜数か月で改善

します。


晩期副作用(治療後数か月〜数年)

晩期副作用は、治療終了から数か月〜数年後に起こる副作用です。

代表的なものとして

  • 放射線性直腸炎
  • 血尿
  • 尿道狭窄
  • 性機能障害

などがあります。

頻度は急性期副作用より少ないですが、長期フォローアップが重要です。

近年は

  • IMRT
  • IGRT
  • 線量制約の最適化

により、重い晩期副作用は以前より大きく減少しています。


血尿、血便について

放射線治療後の血尿、血便については別の記事でまとめています。


 前立腺がん放射線治療の副作用の発生率

前立腺がんの放射線治療では、排尿・排便・性機能などに関する副作用が一定の割合でみられます。

報告されている研究によって多少の差はありますが、代表的な研究では次のような発生率が示されています。

主な副作用の頻度の目安は以下の通りです。

  • 排尿症状(頻尿・尿意切迫など):約70〜80%
  • 排便症状(軟便・下痢など):約60〜70%
  • 治療後3か月時点でも症状が残る患者:約20〜30%
  • 晩期副作用:約5〜30%
  • 性機能障害:約30〜40%

ただし重要なのは、多くの症状は軽度であり、時間とともに改善することが多いという点です。

また現在は、

  • IMRT(強度変調放射線治療)
  • IGRT(画像誘導放射線治療)
  • 直腸スペーサー

などの技術により、直腸や膀胱への線量を減らすことが可能となり、副作用の発生率は以前より低下していると考えられています。


副作用のリスクを高める要因

前立腺がんの放射線治療では、患者さんの状態によって副作用の出方が異なることがあります。

研究では、次のような因子が副作用を強くする可能性があると報告されています。

糖尿病

糖尿病がある場合、血管や組織の回復力が低下するため、放射線治療による炎症が長引くことがあります。

特に血糖コントロールが不良な場合は注意が必要です。


喫煙

喫煙は血流を悪化させ、組織の修復能力を低下させます。

そのため

  • 放射線性直腸炎
  • 膀胱炎

などの副作用リスクが高くなる可能性があります。


抗凝固薬の内服

ワーファリンやDOACなどの抗凝固薬を服用している場合、直腸出血などが起こりやすくなる可能性があります。

ただし、薬の中止は必ず主治医と相談する必要があります。


前立腺肥大や排尿症状

治療前から

  • 頻尿
  • 残尿感
  • 尿勢低下

などの症状がある場合、放射線治療中に排尿症状が強く出ることがあります。


副作用を減らすための最新の放射線治療

現在の放射線治療では、正常臓器への線量をできるだけ減らす技術が発展しています。

これにより、副作用は大きく減少しています。


IMRT(強度変調放射線治療)

IMRTは、放射線の強さを細かく調整することで、前立腺に高い線量を集中させつつ、周囲臓器への線量を減らす治療法です。

現在、多くの施設で標準的に行われている治療法です。


IGRT(画像誘導放射線治療)

前立腺は日によって位置が変わることがあります。

IGRTでは、毎回画像を確認しながら照射を行うことで、治療の精度を高めます。

これにより、正常組織への不要な照射を減らすことができます。


直腸スペーサー

直腸スペーサーは、前立腺と直腸の間にゲル状の物質を注入する方法です。

これにより前立腺と直腸の距離が広がり、直腸に当たる放射線量を減らすことができます。

近年、直腸障害を減らす方法として注目されています。


副作用が出たときの対処法

放射線治療の副作用は、多くの場合適切な治療でコントロール可能です。


排尿症状への対処

排尿症状に対しては

  • α1遮断薬
  • 抗炎症薬

などが使用されることがあります。

また、水分摂取の調整や骨盤底筋のトレーニングなど生活面の工夫も重要です。

骨盤底筋トレーニングの補助器具

排尿症状の改善には ケーゲル体操(骨盤底筋トレーニング) が有効とされています。
自宅でトレーニングを続けるための補助器具も市販されています。

骨盤底筋 内転筋 トレーニング器具 ¥2,379 

骨盤底筋 トレーニング MYTREX マイトレックス AQUA QUTTO EMS ¥20,592


尿漏れパッド

尿漏れが気になる場合は、男性用の軽い尿もれパッドを使うことで日常生活が楽になることがあります。

リフレ 超うす 安心パッド 男性用 ¥576

ライフリー 【尿もれパッド男性用 200㏄】 さわやか 男性用 安心パッド ¥1,009


排便症状への対処

排便症状に対しては

  • 整腸剤
  • 止瀉薬

などが使用されることがあります。

食事内容の調整も症状改善に役立つ場合があります。


性機能障害への対処

性機能障害に対しては

  • PDE5阻害薬

などの薬物療法が有効な場合があります。

年齢や基礎疾患も影響するため、個別の相談が重要です。


放射線治療と手術の副作用の違い

前立腺がんの主な根治治療には

  • 手術(前立腺全摘術)
  • 放射線治療

があります。

それぞれ副作用の特徴が異なります。

一般的に

手術

  • 尿失禁
  • 性機能障害

が問題になることがあります。

一方で

放射線治療

  • 排尿症状
  • 排便症状

がみられることがあります。

ただし、どちらの治療にもメリット・デメリットがあり、患者さんの年齢や病状によって適した治療は異なります。

主治医と十分に相談して治療法を決めることが重要です。


前立腺がん放射線治療の副作用まとめ

前立腺がんの放射線治療では、

  • 排尿症状
  • 排便症状
  • 性機能障害

などの副作用がみられることがあります。

しかし多くの場合、

  • 症状は軽度
  • 時間とともに改善

することが多いと報告されています。

さらに現在は

  • IMRT
  • IGRT
  • 直腸スペーサー

などの技術により、副作用は以前より減少しています。

副作用を正しく理解し、適切に対処することで、多くの患者さんが安全に治療を受けることができます。


専門医コメント

前立腺がんの放射線治療では、副作用を心配される患者さんが多くいらっしゃいます。

確かに排尿症状や排便症状は一定の割合でみられますが、多くは軽度であり、治療終了後に改善することがほとんどです。

また近年は放射線治療の精度が大きく向上しており、以前と比べて副作用は明らかに減少しています。

重要なのは

  • 治療前の排尿状態
  • 基礎疾患
  • 服用している薬

などを主治医と共有し、適切な治療計画を立てることです。

不安な点がある場合は、遠慮なく担当医に相談してください。


よくある質問(FAQ)

Q1 前立腺がん放射線治療の副作用は必ず起こりますか?

軽い症状は比較的多くみられますが、すべての患者さんに起こるわけではありません。


Q2 副作用はいつ頃から出ますか?

多くの場合、治療開始後1〜2週間頃から症状が出始めます。


Q3 副作用は治りますか?

多くの症状は治療終了後数週間〜数か月で改善します。


Q4 放射線治療で尿失禁になりますか?

手術と比べると、重い尿失禁は少ないとされています。


Q5 放射線治療で血便が出ることはありますか?

まれに放射線性直腸炎によって血便が出ることがあります。


Q6 性機能への影響はありますか?

勃起機能の低下がみられることがありますが、薬物治療で改善する場合もあります。


Q7 副作用を減らす方法はありますか?

禁煙や糖尿病のコントロールなど、生活習慣の改善が重要です。


Q8 放射線治療と手術ではどちらが安全ですか?

どちらにもメリットとリスクがあり、患者さんの状況によって最適な治療は異なります。


Q9 放射線治療中は仕事を続けられますか?

多くの患者さんが通常の生活を続けながら治療を受けています。


Q10 放射線治療の医療費はどのくらいかかりますか?

高額療養費制度などを利用することで、自己負担は抑えられる場合があります。


前立腺がんの記事を読んだ方へ

前立腺がんの放射線治療について理解を深めたい方は、以下の記事も参考にしてください。

▶ 放射線治療の基本

放射線治療の仕組みや種類をわかりやすく解説しています。
放射線治療とは?(総合ガイド)


▶ がん治療中の生活

治療中の食事・仕事・日常生活の注意点をまとめています。
がん治療と生活


▶ 医療費・保険

がん治療にかかる費用や制度を解説しています。
がん治療と医療費・保険


放射線治療は、がん治療だけでなく生活や費用とも深く関係する治療です。
ぜひ他の記事も参考に、治療の全体像を理解してください。 


前立腺癌のまとめ記事はこちら

前立腺癌のリスク分類

治療法を決めるための基準となるリスク分類。

ご自身のリスクを把握することがまず第一です。

前立腺癌の治療の詳しい解説はこちら

前立腺癌の治療法を最新の情報に基づいて詳しく解説しています。

リスクに基づく治療選択をどうするのか?

リスクと治療法を確認出来たら、最終的な治療選択になります。

放射線治療専門医が考える治療選択をお伝えします。

前立腺癌の治療選択


6:参考文献

Dearnaley DP, Hall E, Lawrence D, et al. Phase III pilot study of dose escalation using conformal radiotherapy in prostate cancer: PSA control and side effects. Br J Cancer 2005; 92:488-498

Liberman D, Mehus B, Elliott SP. Urinary adverse effects of pelvic radiotherapy. Transl Androl Urol 2014; 3:186-195

Hofer MD, Gonzalez CM. Management of radiation-induced urethral strictures. Transl Androl Urol 2015; 4:66-71

Medscape Radiation cystitis treatment & management

UpToData External beam radiation therapy for localized prostate cancer

がん・放射線療法2017 秀潤社

放射線治療計画ガイドライン2016年版 金原出版

※当サイトはAmazonアソシエイトとして、適格販売により収益を得ています。

広告