直腸スペーサーを用いることで前立腺に大線量を投与することが可能

まとめ

直腸スペーサーを用いることで、前立腺に大線量を安全に照射することが可能になる。

 

 解説

前立腺癌に対してIMRT(強度変調放射線治療)を用いて治療することも一般的になっているが、近年では1回の線量を増やして短期的に治療をする方法も広がってきている。

1回線量を増やすことのメリットとしては、治療期間の短縮ができることと、病変への投与線量を増やせることがある。

一方で、1回線量を増やすことにより、副作用が増える可能性があるというデメリットがある。

前立腺癌の放射線治療における副作用としては、排尿障害、排便障害がおもなものであるが、そのうちの排便障害を軽減する目的で用いられるのが直腸スペーサーである。

特に直腸に多量の放射線が照射されると、重篤な場合には難治性の直腸出血や穿孔をきたす場合があり、治療後のQOL(生活の質)を大きく下げる要因となる。

このため、直腸線量の低減は前立腺癌治療において非常に重要な要素であり、特に大線量を投与する場合には、直腸線量は必ず下げる必要がある。

直腸スペーサーは、直腸と前立腺の間にゲル状のスペーサーを入れることにより、前立腺に放射線を照射しても直腸に多量の放射線が照射されないようにするものである。

この直腸スペーサーは最終的に吸収されて無くなってしまうため、放射線治療中のみスペーサーとして機能する。

今回の研究では、45Gyを5回にわけて照射するという超短期の治療において、直腸スペーサーを用いることで直腸の副作用がどうなるかを検討したものである。

結果として、スペーサをいれない症例と比較して、直腸潰瘍などの重篤な副作用の発生頻度が低減された。

日本では前立腺癌における短期照射あるいは超短期照射はまだまだ一般的とは言えないが、今後広がりを見せる可能性は十分にあると考える。

(特にコロナ禍においては治療期間の短縮というのは、治療中の感染リスクを下げるという意味でも重要である。)

その際に直腸スペーサーの利用は、副作用低減の観点から非常に有用であると考えられ、短期照射の普及とともに広がっていくものと思われる。

 

参考文献

A Multi-Institutional Phase 2 Trial of High-Dose SAbR for Prostate Cancer Using Rectal Spacer

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