肝細胞癌に対する放射線治療 ― 最新エビデンスから見る治療の役割 ―

2022年6月5日

肝細胞癌の治療は、これまで手術やカテーテル治療が中心でした。しかし近年、放射線治療の進歩によって治療の選択肢が大きく広がっています。
この記事では、最新研究をもとに、放射線治療の役割を分かりやすく解説します。

肝細胞癌とは?まず知っておきたい基礎知識

肝細胞癌は、肝臓にできる代表的ながんです。
多くの場合、肝炎や肝硬変などを背景として発症します。

肝臓は重要な臓器であるため、
・肝機能をできるだけ温存する
・身体への負担を少なくする
という点が、治療方針を決めるうえで非常に重要です。

肝細胞癌の代表的な治療法

現在の主な治療には次のようなものがあります。

手術(切除)

早期の肝細胞癌では標準治療とされています。
ただし、侵襲が高く、高齢者や合併症のある患者では選択が難しい場合もあります。

カテーテル治療(TACE)

肝臓癌は主に動脈から栄養を受けるため、
正常肝細胞(門脈)と違い、腫瘍を選択的に攻撃できます。
そのため広く行われている治療です。

放射線治療

以前は適応が限られていましたが、
近年は高精度治療の発展により重要性が増しています。

体幹部定位放射線治療(SBRT)とは?

体幹部定位放射線治療(SBRT)は、
腫瘍に強い放射線を集中的に照射する治療です。

特徴
・短期間で治療が終了
・正常組織への影響が少ない
・高齢者や合併症がある患者にも適応可能

肺癌やリンパ節転移などでも広く使用されています。

小さな肝細胞癌では手術と同程度の成績

5cm以下で肝機能が良好(Child-Pugh A)の患者を対象とした研究では、

・5年生存率
 放射線治療:70.0%
 手術:64.4%
・有意差なし

さらにpropensity score matchingでも同様の結果でした。

この研究では呼吸同期を併用し、3~5回の照射(合計42~45Gy)で治療しています。

この研究の意味

肝細胞癌の治療方針はBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)ガイドラインが有名で、
早期癌では手術が標準です。

しかし、
・高齢
・合併症
・手術困難
といった患者では放射線治療が有力な選択肢となる可能性があります。

肺癌ではすでに同様の流れがあり、今後は肝癌でも変化する可能性があります。

SBRTとTACEの比較①:腫瘍が1~2個の場合

腫瘍が1~2個の症例では、

・有効性:同程度
・安全性:同程度
・局所制御:SBRTが優れる傾向
・生存率:差なし

TACEは非常に優れた治療ですが、
SBRTも同等の治療として考えられます。

SBRTとTACEの比較②:中等サイズ(3~8cm)

別の研究では、次の結果が示されています。

・SBRTはTACEより局所制御と生存率が有意に優れる
・新規症例では差なし
・再発症例ではSBRTが有利

肝細胞癌は再発を繰り返すことが多いため、
特に再発例ではSBRTが有力な選択肢となります。

陽子線治療(粒子線治療)の特徴

放射線治療にはX線のほかに粒子線があります。

粒子線治療は
・陽子線
・重粒子線
に分かれます。

重粒子線は大規模設備が必要ですが、
陽子線は比較的導入しやすい特徴があります。

メリット

X線と比較して
・正常組織への線量を減らせる
・副作用を軽減できる

陽子線治療とX線治療の比較

133例を対象とした研究では、

・生存期間中央値
 陽子線:31ヶ月
 X線:14ヶ月

・2年生存率
 陽子線:59.1%
 X線:28.6%

・副作用:陽子線が有意に少ない

腫瘍制御には大きな差がないものの、
副作用の減少が生存率改善に寄与した可能性が示されています。

肝臓は再生能力がある臓器ですが、
正常組織へのダメージを減らす重要性が示された結果です。

肝細胞癌術後の放射線治療

理想は完全切除ですが、
・断端が近接
・断端陽性
という状況も少なくありません。

683例を対象とした研究では、

・生存期間中央値
 放射線治療:72.5ヶ月
 非照射:52.5ヶ月

・無再発生存期間
 放射線治療:37.3ヶ月
 非照射:24.0ヶ月

いずれも有意に改善しました。

結論

断端近接・陽性例では、
術後放射線治療が予後改善に寄与する可能性があります。

切除不能肝細胞癌の最新薬物療法

近年、薬物療法も大きく進歩しています。

臨床医学のトップ雑誌である
New England Journal of Medicine
に掲載された研究では、

・アテゾリズマブ+ベバシズマブ
・ソラフェニブ

を比較しました。

結果
・死亡率:併用群で低い
・12ヶ月生存率
 併用:67.2%
 ソラフェニブ:54.6%

従来の標準治療を上回る成績でした。

今後はこの治療と放射線の併用が検討される可能性があります。

まとめ

現在のエビデンスから、放射線治療は次のような役割を持っています。

・小さな肝細胞癌では手術と同程度の成績
・TACEと同等、または再発例では優れる可能性
・陽子線は副作用軽減による生存改善の可能性
・術後補助療法として有効
・薬物療法との併用が今後の課題

肝細胞癌の治療は急速に進歩しており、
患者ごとに最適な治療を選択する時代になっています。

生活習慣の改善に

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肝細胞癌治療法の比較一覧

治療法対象となる患者治療回数主なメリット主な特徴研究結果のポイント
手術初期肝細胞癌1回根治性が高い侵襲が大きい5年生存率64.4%
SBRT小型~中型、再発例3~5回短期間・高精度外来可能な場合も小型癌で5年生存率70%
TACE多発例・中間期複数回腫瘍血管へ直接治療カテーテル治療少数例ではSBRTと同等
陽子線治療肝機能温存が重要な例数回~正常肝への線量減副作用が少ない生存中央値31ヶ月
術後放射線断端近接・陽性20~30回再発抑制補助療法生存72.5ヶ月
免疫療法切除不能例継続投与全身治療併用療法が主流12ヶ月生存67.2%

まとめ

肝細胞癌における放射線治療の役割は急速に広がっています。

重要なポイントは
・小さな肝細胞癌では手術と同等の可能性
・腫瘍が少数ならTACEと同程度
・再発例ではSBRTが有利
・陽子線は副作用を減らす
・術後放射線で予後改善
・免疫療法との併用が今後の課題

放射線治療は、
手術や薬物療法と並ぶ重要な選択肢です。

患者ごとの状態に応じて、
最適な治療を選択することが重要です。

放射線治療の費用・期間・副作用についてはこちら

  • 放射線治療の費用

  • 放射線治療の期間

  • 放射線治療の副作用(まとめ)

肝細胞癌の放射線治療 FAQ

Q1. 肝細胞癌に放射線治療は効きますか?

はい。特に小さな肝細胞癌では、体幹部定位放射線治療(SBRT)は手術と同程度の生存率が報告されています。また、再発例ではTACEより優れる可能性も示されています。

Q2. SBRTとは何ですか?

SBRT(体幹部定位放射線治療)は、腫瘍に高線量を短期間(3~5回程度)で集中的に照射する治療法です。通常の放射線治療より治療回数が少なく、精度が高いのが特徴です。

Q3. TACEと放射線治療はどちらが良いですか?

腫瘍が1~2個の場合、SBRTとTACEは同程度の有効性と安全性が報告されています。

再発例ではSBRTが優れる可能性があります。

Q4. 陽子線治療は通常の放射線治療と何が違いますか?

陽子線治療は正常肝組織への線量を減らすことができ、副作用を軽減できる可能性があります。生存率改善が示された報告もあります。

Q5. 手術後にも放射線治療は必要ですか?

断端近接や断端陽性の場合、術後放射線治療により生存率や無再発生存期間が改善する可能性があります。

Q6. 薬物療法と放射線治療は併用できますか?

現在、アテゾリズマブ+ベバシズマブなどの免疫療法と放射線治療の併用が今後の重要な研究テーマとなっています。

参考文献

Stereotactic Body Radiation Therapy as an Alternative to Transarterial Chemoembolization for Hepatocellular Carcinoma

2017 Jul 1;98(3):639-646. doi: 10.1016/j.ijrobp.2017.02.095. Epub 2017 Mar 1.

Long-Term Survival Analysis of Stereotactic Ablative Radiotherapy Versus Liver Resection for Small Hepatocellular Carcinoma.

Atezolizumab plus Bevacizumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma

Comparison of Stereotactic Body Radiation Therapy and Transarterial Chemoembolization for Unresectable Medium-Sized Hepatocellular Carcinoma

Protons versus Photons for Unresectable Hepatocellular Carcinoma: Liver Decompensation and Overall Survival

Association of Adjuvant Radiation Therapy With Long-Term Overall and Recurrence-Free Survival After Hepatectomy for Hepatocellular Carcinoma: A Multicenter Propensity-Matched Study

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