乳がん術後の放射線治療「5回照射」は可能? 週1回×5回治療(AWBI)の最新エビデンスと現状
乳がんの温存手術後、多くの方が受けるのが放射線治療です。
一般的には
25回(5週間)
もしくは16回(約3週間)
の治療が行われています。
しかし近年、週1回・合計5回のみで行う超短期照射の研究結果が報告され、注目を集めています。
この記事では、
乳がん術後5回照射とは何か
通常治療との違い
再発率や安全性
海外の動向
日本での課題
を分かりやすく解説します。
乳房温存術後の標準的な放射線治療
まず現在の標準治療を整理します。
■ 通常照射
1回2Gy
合計25回
5週間、平日毎日通院
■ 寡分割照射(Hypofractionation)
1回線量をやや増量
合計16回程度
約3週間の通院
近年、日本でもこの16回照射が広まりつつあります。
特にコロナ禍以降、治療期間短縮の意義が高まり、導入施設が増えています。
ただし、どちらも平日毎日の通院が必要です。
通院負担という大きな問題
放射線治療は手術後の重要な治療ですが、通院の負担は小さくありません。
40〜50代の働く世代が多い
過疎地域では放射線治療施設が遠い
宿泊しながら治療すると費用負担が大きい
通院困難を理由に放射線治療を断念するケースも現実には存在します。
そこで注目されているのが、週1回のみの治療です。
週1回×5回照射とは?
今回紹介するのは、
週に1回の照射を5週間
合計5回で行う治療
です。
通常は1回2Gyですが、この研究では
1回5.7~6Gyを照射しています。
総線量は28.5~30Gyを5回に分割。
回数を減らす代わりに、1回線量を増やす方法です。
この研究の概要(Phase2試験)
対象:約150例
年齢中央値:59歳
観察期間中央値:5.5年
再発率は以下の通りでした。
5年:2.7%
7年:4.7%
10年:7.2%
これらは、
25回照射
16回寡分割照射
と遜色ない結果でした。
副作用(特に皮膚の整容性)も通常照射と差はなかったと報告されています。
ただしこれはPhase2の初期報告段階であり、大規模試験ではありません。
AWBIとFAST試験・FAST-Forward試験
この週1回5回照射は、AWBI(Accelerated Whole Breast Irradiation)の一種です。
AWBIとは?
乳房全体に対して、より少ない回数で照射する方法。
通常:
50Gy / 25回
AWBI:
26~30Gy / 5回
FAST study
週1回×5回
結果的に5週間かかる
FAST-Forward study
5日間連続5回
通常照射と同様の期間で終了
最近、長期成績が報告され、良好な局所制御が示されています。
APBIとの違い
海外ではAPBIも普及しています。
APBI(部分乳房照射)
病変部のみに照射する方法。
5~10回で終了
局所成績・美容面ともに通常照射と遜色なし
小線源治療(乳房に一時的に針を刺して内部から照射)も存在
APBIは対象が限定されますが、すでに多くの研究で有効性が示されています。
IORT(術中照射)の問題点
IORTは手術中に放射線を照射する方法です。
理論上は最短治療ですが、
局所再発率が通常照射より高い
準備が大変
正確性の担保が難しい
といった問題が報告されています。
コロナ禍で加速した短期照射
イギリスでは、
コロナ前のAWBI採用率:0.2%
コロナ禍:60.6%
まで急増しました。
感染リスク低減のため、短期照射の需要が急拡大したのです。
現在は落ち着きつつありますが、
超短期照射のニーズは確実に存在すると考えられます。
日本の現状と課題
日本ではようやく16回の寡分割照射が広まりつつある段階です。
まだガイドライン上、若年女性への適応には慎重です。
さらに問題なのは、
保険制度の制約
このような5回治療を行うと、
病院側が赤字になる可能性があります。
有効な治療が存在しても、
制度上の問題で普及しない可能性がある点は大きな課題です。
週1回×5回照射は誰に向いているか
特に検討価値があるのは、
毎日通院が困難な方
過疎地在住
仕事で平日通院が難しい
宿泊治療が困難
通院困難を理由に放射線治療を諦めるよりも、
週1回でも治療を受ける方がはるかに有益と考えられます。
まとめ
✔ 乳がん術後の放射線治療は通常25回
✔ 日本では16回照射が普及中
✔ 海外では5回照射(AWBI)が有効性を示している
✔ 週1回×5回でも再発率は標準治療と遜色ない報告
✔ まだPhase2段階で長期成績のさらなる蓄積が必要
✔ 日本では保険制度が課題
放射線治療も「回数を減らす時代」に入りつつあります。
今後さらに選択肢が広がる可能性があります。
現時点での乳がん術後の放射線治療に関してのまとめ
現在の最新情報をまとめています。
16回照射のまとめ記事はこちら
現在普及している寡分割照射である16回照射の安全性や副作用、QOLについて詳しくまとめています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 乳がん術後の放射線治療は通常何回行いますか?
現在の標準的な治療は、1回2Gyを25回、約5週間かけて行う方法です。
近年は治療回数を減らした寡分割照射(約16回、約3週間)も広まっています。
Q2. 乳がん術後の「5回照射」とはどのような治療ですか?
週に1回の照射を5週間、合計5回で行う放射線治療です。
1回あたりの線量は通常より多く、約5.7~6Gyを照射します。
総線量は28.5~30Gyです。
Q3. 5回照射の治療成績は通常治療と比べて劣りませんか?
約150例を対象としたPhase2試験では、
5年・7年・10年の再発率はそれぞれ2.7%、4.7%、7.2%でした。
これらは25回照射や16回照射と遜色ない結果と報告されています。
Q4. 副作用は強くなりませんか?
報告では、皮膚の副作用や整容性(見た目)の面で、通常照射との差はなかったとされています。
ただし、まだ大規模試験ではなく、長期成績のさらなる蓄積が必要です。
Q5. 5回照射は毎日通院する必要がありますか?
いいえ。週1回のみの通院で、合計5週間です。
毎日通院する25回照射や16回照射と比べると、通院負担は大きく軽減されます。
Q6. AWBIとは何ですか?
AWBI(Accelerated Whole Breast Irradiation)は、乳房全体に対して短期間で照射を行う方法です。
通常50Gyを25回で照射するところを、26~30Gyを5回で行います。
FAST試験やFAST-Forward試験で良好な成績が報告されています。
Q7. APBIとの違いは何ですか?
APBIは乳房全体ではなく、病変部のみに照射する方法です。
5~10回で終了することが多く、美容面や治療成績も通常照射と遜色ないと報告されています。
一方、AWBIは乳房全体に照射します。
Q8. IORT(術中照射)は5回照射より優れていますか?
IORTは手術中に1回で照射を行う方法ですが、
通常照射と比較して局所再発率が高いことが報告されています。
準備や精度管理の面でも課題があります。
Q9. 日本では5回照射は受けられますか?
日本では現在、16回の寡分割照射が広まりつつある段階です。
5回照射は保険制度の制約もあり、広く普及している状況ではありません。
Q10. どのような人に5回照射は向いていますか?
毎日の通院が困難な方、過疎地域在住の方、仕事で通院が難しい方などにとっては検討価値があります。
通院困難を理由に放射線治療を断念するよりも、週1回でも治療を受けることは有益と考えられます。
乳がんの放射線治療と心臓線量の関係について
乳がんの放射線治療では心臓への線量も無視できないものとなっています。
最近の心臓リスクに関する研究を分かりやすくまとめました。
参考文献
Final Analysis of a Phase 2 Trial of Once Weekly Hypofractionated Whole Breast Irradiation for Early-Stage Breast Cancer
- PMID: 34710520
- DOI: 10.1016/j.ijrobp.2021.06.026
First Results of a Phase 2 Trial of Once-Weekly Hypofractionated Breast Irradiation (WHBI) for Early-Stage Breast Cancer.





















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