医者の余命宣告は意外とあてにならないという話
目次
1:余命宣告はする?
2:医者が考える余命はどこまで正確なのか?
3:今後の予後予測について
4:参考文献
余命宣告はする?
がん治療をしていると、余命はどれぐらいでしょうかと聞かれることが時々あります。
自分自身は、個人的には余命宣告は積極的にはしていません。
これは余命というのは意外にあてにならないなと普段から感じているからです。
自分で診ていても、予想よりも長期に元気で過ごされる方もいれば、急に亡くなられる場合もあります。
よく転移があれば半年と言いますが、最近は治療の進歩もあり、必ずしもこれに当てはまらなくなってきています。
なので、診察の際に余命を聞かれた場合には一般的な生命予後をお伝えしていますが、これはあくまで大規模調査にもとづく数値であり、個人個人がこれに当てはまるわけではないことを説明しています。
そもそも、余命を伝えるというのは、それがどのような期間であったとしても、本人にとっては非常にショックなものになる場合がほとんどです。
個人的には、どこまで正確か分からない余命を伝えて、本人にショックを与えるよりも、現在の治療に対してしっかりと取り組むほうが重要なのではないかと考えています。
医者が考える余命はどこまで正確なのか?
興味深い研究があったので紹介したいと思います。
放射線治療医に対して、転移を有する患者の予後予測をしてもらい、その正確性を評価した研究です。
その結果は、正確に評価できたものは約40%であり、その他は過大評価あるいは過少評価でした。
つまり、医師が正確に予後を評価できていた症例は半分にも満たないという結果でした。
これは自分の感覚とも合致するものです。
予後の予測というのは意外に難しいものなのです。
予測の正確性が高い症例は予後が短いものでした。
逆に長期生存が可能な場合には正確性が劣る傾向にありました。
また、詳細な解析では、若年のほうが予後を過少に評価する傾向にあり、逆に高齢者では予後を過大に評価する傾向が見られました。
また、予後に影響する因子としては活動性(PS)が重要な指標でした。
今後の予後予測について
現時点では予後予測はまだまだ正確なものとは言えません。
治療法も日々進歩しており、以前の結果が現状に当てはまらなくなってきているのも大きいと思います。
最近ではAI技術の進歩もあり、これまでの解析では非常に時間がかかったものが、より短期間で結果を得ることが可能にもなってきています。
そういった解析技術の進歩によって、予後予測の精度が上がっていくことが期待されます。
また、予後予測の精度が上がれば、その予後に合わせた最適な治療法の選択にも結び付き、生活の質(QOL)の向上も期待できると思います。
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