20年間の治療技術、画像検査の進歩により癌治療の成績は大きく向上した
まとめ
解説
1990年~2012年にかけて治療された上咽頭癌の患者の治療成績を年代にわけて比較した研究である。
この20年間の間に様々な治療技術、画像診断の進歩があった。
代表的なものとしては、2000年頃から頭頚部癌の画像診断の主流がCT画像からMRI画像が切り替わった。
MRI画像はCT画像に比較して組織のコントラストが明瞭に描出されるため、脳や頭頸部、骨盤部領域で特に有用な画像検査である。
MRI画像の利用によって腫瘍がより正確に描出されることになり、腫瘍の進展範囲やステージの判断がより容易になった。
治療技術においては、従来は3次元照射が一般的であったが、2010年頃から強度変調放射線治療(IMRT)が広く普及するようになった。
IMRTは病変部に集中的に放射線を照射することができ、周囲のリスク臓器への線量を減らすことのできる照射法である。
このため、腫瘍の線量を落とさずに、副作用を低減することが可能である。
また、化学療法の併用についても2000年頃より導入されるようになっている。
これらの変化の結果、この20年間の間で治療成績が大きく改善することとなった。
上の図はそれぞれ左から右に行くにつれて年代が新しくなっている。
左上が全生存率(OS)、右上が無増悪生存率(PFS)、
左下が局所制御(LRFS)、右下が転移の無い生存率(DMFS)となっている。
DMFS以外はいずれも年代が新しくなるにつれて改善していく傾向が見られている。
そして、さらなる解析では、治療技術の進歩や、画像診断の革新が、治療成績の向上に寄与していることが、統計的に示されている。
また、再発様式の検討では、上の図はAからDにかけて年代が新しくなっているが、年代が進むにつれて、緑の割合が増えていることがわかる。
緑は遠隔転移による再発であり、逆に局所再発は減っているという結果であった。
つまり、治療技術の進歩により、病変部じたいは十分に制御されており、今後の課題は遠隔転移のコントロールであることがわかる。
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