放射線治療後の骨盤不全骨折について

目次

1:放射線治療後の骨折
2:婦人科領域における骨盤骨折
3:放射線治療後の骨折予防のために
4:参考文献

放射線治療後の骨折

放射線治療後の骨折はそこまで頻度は高くないですが、しばしば経験される副作用のひとつです。

これは放射線を骨に照射すると、照射された骨が徐々にもろくなっていくためにおこるものです。

そして、基本的にこの変化は不可逆であり、一度もろくなってしまった骨というのは、その後の経過で大きく改善するということはありません。

骨折は部位によってはその後の生活の質(QOL)を大きく低下する副作用の一つです。

場所によってはそのまま寝たきりになってしまう可能性もあります。

このため、できる限り骨折を避けられるように放射線治療を行うというのも、その後の生活を考えるうえで重要なポイントとなります。

婦人科領域における骨盤骨折

婦人科腫瘍に対する放射線治療を行った際の、骨盤不全骨折について調べたメタアナリシスを紹介します。

21の研究、合計で4000例近い症例を対象としたメタアナリシスです。

このうち、約500例(14%)で不全骨折が見られ、そのうちの60%が有症状の骨折でした。

骨折の発生率に影響する因子としては、最近の研究、IMRTを用いた治療では骨折の発生率が有意に少なくなっていました。

不全骨折が最もよく見られたのは仙腸関節(40%)で、次に仙骨体部(34%)でした。

放射線治療後の骨折予防のために

データで示されるように、近年の研究においては、骨折予防の重要性が示されてきており、できるだけ骨折を避けるような照射が選択されてきているように思います。

また、IMRTの利用も着実に増えてきており、これも放射線治療後の骨折の発生率を減少させるのに大きく寄与していると考えられます。

婦人科領域のみでなく、他の領域でも放射線治療はがん治療において重要な役割を果たしますが、治癒後の日常生活をいかにこれまでと変わらずに過ごせるのかというのも重要です。

そういった観点から、骨折予防は治療後のQOLに寄与する部分は大きいと考えられ、積極的にIMRTを採用していくことは腫瘍制御のみでなく、副作用低減の観点からも必要不可欠であると考えます。

参考文献

Pelvic Insufficiency Fractures After External Beam Radiation Therapy for Gynecologic Cancers: A Meta-analysis and Meta-regression of 3929 Patients

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