コロナ禍における放射線治療

― 手探りの中でのがん治療 ―
COVID-19(新型コロナウイルス)感染の流行は長期化し、社会のあり方を大きく変えました。その影響は医療現場、そしてがん治療の分野にも及んでいます。
未知の感染症に直面した当初、医療現場には十分なエビデンス(科学的根拠)がありませんでした。そのため、手探りの状態で最適な治療方針を模索する必要がありました
コロナ禍で浮かび上がった、がん治療の疑問
COVID-19とがん治療が重なることで、さまざまな疑問が生じました。
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COVID-19に感染した患者は、他の感染症と同様に放射線治療を受けることができるのか?
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免疫療法はCOVID-19感染のリスクを高める可能性があるのか?
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化学療法による免疫抑制状態はCOVID-19感染にどのような影響を与えるのか?
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COVID-19感染は、がんの術後合併症に影響するのか?
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がん治療後のフォローアップはリモート診療で十分なのか?
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パンデミックにより治療リソースが限られる中、患者をどのような優先順位でトリアージすべきなのか?
これらの疑問については、症例やデータの蓄積とともに、今後徐々に明らかになっていくと考えられます。
コロナ流行後の放射線治療の変化
COVID-19の流行は、放射線治療のあり方にも大きな変化をもたらしました。
その代表的な変化が「寡分割照射(かぶんかつしょうしゃ)」の導入拡大です。
コロナ流行が放射線治療に与えた具体的な影響については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
▶ 【コロナ流行は放射線治療をどう変えた?】
寡分割照射とは何か?
寡分割照射とは、
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1回あたりの放射線量を多くする
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治療回数を減らす
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治療期間を短縮する
という方法です。
通常の放射線治療よりも通院回数を減らすことができるため、コロナ禍では特に重要な治療戦略となりました。
なぜ寡分割照射が重要になったのか?
COVID-19流行期においては、通院そのものが感染リスクになります。
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病院という環境自体が感染リスクを伴う
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通院回数が増えれば感染機会も増える
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患者が感染していた場合、院内感染を広げる可能性がある
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医療従事者に感染が広がれば、放射線治療そのものが停止する危険性もある
このような背景から、治療期間を短縮できる寡分割照射は大きな役割を果たすようになったのです。
寡分割照射の適応
ただし、すべての放射線治療に寡分割照射が適応できるわけではありません。
放射線治療には、これまでの大規模研究によって有効性が確立された「標準治療」が存在します。寡分割照射は比較的新しい治療法であり、領域によっては十分なエビデンスが確立していないものもあります。
コロナ禍で特に進んだ領域
① 乳癌(乳がん)
コロナ以前は25回照射が一般的でしたが、流行を契機に16回の寡分割照射へ移行した施設も多いと考えられます。
② 骨転移
通常の姑息照射では約10回が一般的ですが、
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5回
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4回
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場合によっては1回
で終了することもあります。
③ 前立腺癌
通常は35回以上必要ですが、寡分割照射では約20回程度で終了します。
期間としては2〜3週間程度の短縮になります。
④ その他の領域
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頭頚部癌
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肺癌
などでも寡分割照射を採用する施設はありますが、まだ一般的とは言えません。
今後、エビデンスがさらに蓄積されれば、寡分割照射はより広く浸透していく可能性があります。
まとめ
COVID-19のパンデミックは、がん治療、とくに放射線治療の現場に大きな変化をもたらしました。
その中で重要な役割を果たしたのが寡分割照射です。
感染リスクを抑えながら治療を継続するために、医療現場は手探りで最善策を模索してきました。今後もデータの蓄積とともに、より安全で効率的ながん治療の形が確立されていくと考えられます。


















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