乳癌術後の陽子線治療では皮膚炎に注意が必要

目次

1:陽子線治療の利点と普及
2:X線治療と陽子線治療の皮膚炎の比較
3:まとめ
4:参考文献

 

陽子線治療の利点と普及

乳癌の術後、特に部分切除術後では放射線治療を行うのが標準の治療となっています。

最近では粒子線治療のひとつである陽子線治療が行える施設も徐々に増えてきており、乳癌の術後においても通常の放射線治療ではなく、陽子線治療を行う場合が出てきています。

(ただ、記事の執筆時点では乳癌術後の陽子線治療は保険適応ではないと思われるため、実際に受ける際には費用等に注意が必要です)

アメリカのデータにはなりますが、2005年時点では陽子線治療施設は4か所でしたが、2019年時点では27か所と大きく増えてきています。

陽子線治療のメリットとしては、その優れた線量分布があります。

専門的になると難しくなるのですが、粒子線治療の特徴としては標的腫瘍に高線量を照射することが可能ないっぽうで周囲臓器の被曝をおさえることができるという点がメリットになります。

乳癌術後の場合で、特に問題となるのは心臓の線量です。

心臓は基本的に左側にあるため、特に左側の乳癌の照射の際に問題になります。

心臓については、通常の放射線治療で照射を行うと、心臓の先端部分にある程度の放射線が照射される場合が多く、これが将来的な心疾患発生のリスクになることがあります。

乳癌の場合は特に40-50代の方も多く、その後の人生が長いことから、この心疾患リスクについても無視できないと考えられ、可能であれば心臓への照射は避けることが望ましいです。

その点で、陽子線治療は乳腺に十分な放射線を照射しながら、心臓の線量を下げられるというメリットがあるのです。

 

X線治療と陽子線治療の皮膚炎の比較

今回紹介する研究では、乳癌術後の放射線治療において、これまでのX線治療と陽子線治療で、皮膚炎の程度を比較しています。

結果として、陽子線治療のほうがX線治療と比較して皮膚炎が強く出る傾向にありました。

Grade 2の皮膚炎は、乳癌治療においては比較的軽度の皮膚炎ですが、その頻度が陽子線治療では69%であったのに対して通常の照射では30%でした。

そこまで強い皮膚炎ではないですが、陽子線治療のほうが、より強い皮膚炎が出やすいという結果でした。

これは陽子線のほうがX線に比較して、仮に同じ線量であったとしても皮膚への影響が出やすいという性質に起因している可能性があります。

また、Grade 4以上の強い皮膚炎はどちらの群でも見られませんでした。

 

まとめ

陽子線治療施設は近年増えてきており、将来的に乳癌術後の放射線治療においても、これまでのX線治療だけでなく、陽子線治療が適応される可能性があります。

陽子線治療のメリットとしては、特に心臓の線量を下げることができるという点があります。

いっぽうで、陽子線治療は従来のX線治療に比較すると皮膚炎が強く出る傾向があり、実際の治療の際には注意が必要です。

ただし、この皮膚炎についても重篤なものは見られていないため、皮膚炎のみで陽子線治療を敬遠する要素にはならないと考えます。

 

参考文献

Quantification of Acute Skin Toxicities in Patients With Breast Cancer Undergoing Adjuvant Proton versus Photon Radiation Therapy: A Single Institutional Experience

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