喫煙はがん治療の成績を悪くするという話題
目次
1:喫煙と癌
2:中咽頭癌治療における喫煙
3:喫煙の影響は?
4:参考文献
喫煙と癌
以前の記事でも触れたことがありますが、喫煙は基本的に放射線治療を含めたがん治療においてあまり良い影響はありません。がん治療の観点から言うのであれば、吸っていないのが望ましいですが、治療前にやめるのも効果があります。
治療中も吸い続けるというのは基本的に良くないですし、治療をする医療者に対しても、治療に真剣では無いのではないかという印象を与えるおそれがあります。
(もちろん、それによって治療内容が変わるということはないですが)
中咽頭癌治療における喫煙
今回紹介する研究は中咽頭癌の治療における喫煙の影響を調べたものです。
中咽頭癌を含めた、耳鼻科領域のいわゆる頭頚部癌においては、以前から喫煙や飲酒が発癌のリスク因子と言われてきました。
しかしながら、近年では喫煙をベースとしない、ウイルス感染による中咽頭癌が増えてきています。
中咽頭癌のリスクとなるのはヒトパピローマウイルス(HPV)で、これは子宮頚癌の原因ウイルスともなるものです。
HPVには様々な型があるため、発生する癌によって原因となるウイルスの型は変わってきます。
今回の研究では、このHPVを原因とした中咽頭癌においても喫煙が治療成績に悪影響を及ぼすのかを検討したものです。
喫煙の影響は?
結果として、中咽頭癌の治療において、現在も喫煙を続けている群がもっとも成績が悪く、以前に吸っていた群と吸っていなかった群が同程度の成績でした。
上の図は全生存と喫煙の影響を示したものです。
緑は以前に吸っていた群、青が吸っていなかった群、オレンジが現在も喫煙を続けている群になります。
こちらの図は非再発率と喫煙の関係性を示した図です。
いずれの図も、上にあるほうが治療成績が良いということになります。
この図から分かるように、喫煙を継続している群では治療成績が悪くなっていることがわかります。
また、喫煙本数についても、基本的に喫煙量が多くなるほど治療成績が悪くなる傾向にあります。
喫煙がどのように治療成績に影響するかは、様々な要因があると考えられます。
まず喫煙によってがん細胞の性質じたいが治療抵抗性になる可能性です。
また、喫煙は末梢血管の循環を阻害しますが、血液が十分にいきわたっていないと抗がん剤や放射線治療の成績が悪くなることが知られています。
副作用においても喫煙によって症状が悪くなることが報告されていますが、これによって通常の治療スケジュールを完遂できないあるいは遅延するということも起こり得ます。
喫煙は様々な要素によって治療成績に悪影響をもたらしている可能性があります。
喫煙習慣はデメリットだけではないと思いますが、がん治療においては悪影響が大きく、治療成績を悪くするという報告が多いため、できるだけ禁煙することが望ましいです。
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