頭頸部癌(上咽頭癌・中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌)の放射線治療と副作用を専門医が解説

2023年6月11日

頭頸部癌(上咽頭癌・中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌など)では、放射線治療が非常に重要な役割を担います。

放射線治療の最大の特徴は、
臓器の形や機能を温存できることです。

頭頸部は、

  • 話す

  • 食べる

  • 飲み込む

  • 呼吸する

  • 見た目(顔貌)

といった、生活の質(QOL)に直結する重要な機能が集中しています。

そのため、機能を保てる放射線治療は大きな意味を持ちます。

一方で、副作用が全く起こらないわけではありません。

特に化学放射線療法で治癒が得られる症例も多いため、
治療後の副作用が長期間にわたり生活へ影響する可能性があります。

皮膚炎の記事はこちら

放射線治療中の皮膚炎についての記事はこちらにまとめています。

放射線宿酔についての記事はこちら

放射線治療中の副作用の一つである、放射線宿酔についてはこちらにまとめています。

放射線治療後の副作用の経過

ここでは、比較的予後が良いとされるHPV関連中咽頭癌を対象とした研究を紹介します。

やや弱めの治療を行った症例で、副作用の経過が評価されています。

【表①】頭頚部癌治療における主な副作用と回復の目安

副作用・項目治療後3〜6か月1〜2年後の回復率特徴
QOL(生活の質)ほぼ治療前まで改善70〜80%が回復比較的回復しやすい
身体機能ほぼ改善70〜80%が回復比較的早期に改善
嚥下障害約3か月で改善傾向多くが回復回復しやすい
味覚障害長期間持続することあり約40%が回復個人差あり
口渇(口の乾き)長期間持続約20%が回復最も回復しにくい

治療後3〜6か月の変化

  • QOL(生活の質)

  • 身体的機能

これらは治療後3〜6か月でほぼ治療前の水準まで改善していました。

一方で、

  • 嚥下障害(飲み込みにくさ)

  • 味覚障害

  • 口渇(口の乾き)

には違いが見られました。

嚥下障害

→ 約3か月で改善傾向

味覚障害

→ 長期間持続することがある
→ ただし、個人差はあるが治療前まで回復する人もいる

口渇

→ 長期間続くことが多い
→ 完全に元通りまで回復するのは稀

実際の診療現場でも、口渇は特に長期に残りやすい副作用です。

ただし、味覚障害・口渇ともに、時間とともに徐々に改善する傾向はあります。

口渇がつらい場合は

放射線治療後の口の乾きがつらい場合は、口腔保湿ジェルを使用することで症状が和らぐことがあります。

和光堂 Oral plus オーラルプラス 口腔保湿ジェル うるおいキープ 60g

1年後・2年後の回復率

治療前の水準まで回復した割合は以下の通りです。

QOL・身体機能

→ 1〜2年で 70〜80%が回復

味覚障害

→ 2年後で 約40%が回復

口渇

→ 2年後で 約20%が回復

つまり、

  • 味覚障害や口渇は回復しにくい

  • ただし時間経過で徐々に改善する

という特徴があります。

頭頸部癌の放射線治療と脳梗塞リスク

頭頸部癌(上咽頭癌・中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌)に対する放射線治療では、
長期的な脳梗塞リスクが以前から指摘されています。

約14,000人を対象とした大規模研究では、

  • 年齢

  • 放射線治療の有無

  • 合併症の有無

が脳梗塞発生の有意な因子でした。

手術群と比較した場合、
放射線治療群のハザード比は 1.7 でした。

本文では脳梗塞による死亡のグラフが示されていましたが、
有意差の詳細な統計解析結果は示されていません。

それでも、

  • 高齢者

  • 生活習慣病などの合併症を持つ方

では、特に注意が必要です。

IMRT(高精度放射線治療)と血管線量

近年はIMRTなどの高精度治療が行われています。

しかし、

  • 内頸動脈などの血管

  • 血管への線量

はより複雑に評価する必要があります。

場合によっては、血管に高線量がかかることもあり、
長期的副作用は慎重な経過観察が必要です。

【表②】頭頸部癌の放射線治療と脳梗塞リスク

以下の表にまとめます。

項目内容
対象患者数約14,000人
比較手術群 vs 放射線治療群
ハザード比1.7(放射線治療群)
リスク因子年齢、放射線治療の有無、合併症
注意が必要な人高齢者、合併症を持つ患者

頭頸部癌の放射線治療と歯への影響

頭頸部癌治療では、歯への影響も重要な問題です。

永久歯は一度失うと再生しません。

歯の本数は寿命とも関連すると言われるほど、
健康と密接に関係しています。

頭頸部癌の放射線治療では、

  • 口腔内が照射範囲に入る

  • 唾液腺が照射される

ことが多く、

  • 唾液量の低下

  • 虫歯リスクの増加

につながります。

歯が失われるリスク(572例の研究)

頭頸部癌患者572例を2年間追跡した研究では、

2年間で

17.8%が少なくとも1本の歯を失った

歯を失うリスク因子は:

  • 治療前の歯の本数が少ない

  • 唾液分泌量の低下

  • 歯の清掃不足

さらに、

  • 治療前から虫歯がある

  • 唾液が減少している

場合は、リスクが有意に高くなっていました。

重要なポイント

もともと歯の清掃が不十分でも、

・経過観察中に積極的に歯磨きを行うようになった群では
・歯を失うリスクが有意に低下

していました。

最もリスクが高かったのは、

  • もともと口腔衛生に無関心

  • 治療後も改善しなかった群

でした。

日々の歯のケアに

唾液が減少するため、フッ素入り歯みがき剤でのケアが重要になります。

ライオン歯科材 ジェル チェックアップ ルートケア 1450F 90g

【表③】頭頸部癌の放射線治療と歯への影響

以下の表にまとめます。

項目結果
対象572例
観察期間2年間
歯を1本以上失った割合17.8%
主なリスク因子治療前の歯が少ない、唾液減少、歯磨き不足
リスクを下げる方法経過中に歯の清掃を改善する

まとめ

頭頸部癌(上咽頭癌・中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌)に対する放射線治療では、

比較的回復しやすいもの

  • QOL

  • 身体機能

長期間残りやすいもの

  • 味覚障害(2年で約40%回復)

  • 口渇(2年で約20%回復)

ただし、時間とともに徐々に改善する傾向はあります。

また、

  • 脳梗塞リスク(特に高齢者・合併症あり)

  • 歯の喪失(2年で約18%)

といった長期的な影響もあります。

しかし、歯の清掃を改善することでリスクは低下します。

この記事のポイント

✔ 頭頸部癌では放射線治療が重要
✔ 味覚障害と口渇は長期に残りやすい
✔ 脳梗塞は長期的注意が必要
✔ 歯のケアは予後を左右する
✔ 時間経過と自己管理が非常に重要

頭頚部癌治療の最新情報はこちら

頭頚部癌治療の最新情報を詳しく解説しています。

頭頸部癌(上咽頭癌・中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌)の放射線治療の副作用 FAQ

Q1. 頭頸部癌の放射線治療ではどのような副作用がありますか?

頭頸部癌(上咽頭癌・中咽頭癌・下咽頭癌・喉頭癌)の放射線治療では、以下の副作用がみられます。

  • 嚥下障害(飲み込みにくさ)

  • 味覚障害

  • 口渇(口の乾き)

  • 歯への影響

  • 長期的には脳梗塞リスク

放射線治療は機能温存が可能な治療ですが、副作用が全く起こらないわけではありません。

Q2. 放射線治療後、生活の質(QOL)は回復しますか?

QOLや身体機能は、治療後3〜6か月でほぼ治療前の水準まで改善することが多いと報告されています。

1〜2年後では、約70〜80%の人が治療前の水準まで回復しています。

Q3. 味覚障害はどのくらい続きますか?

味覚障害は長期間持続することがあります。

2年後に治療前の水準まで回復している人は約40%と報告されています。

ただし、時間とともに徐々に改善する傾向はあります。

Q4. 口の渇き(口渇)は治りますか?

口渇は特に長期間続きやすい副作用です。

2年後に治療前の水準まで回復している人は約20%と報告されています。

完全に元通りになることは稀ですが、時間とともに徐々に改善することがあります。

Q5. 嚥下障害は改善しますか?

嚥下障害は比較的回復しやすく、治療後約3か月で改善する傾向があります。

Q6. 頭頸部癌の放射線治療で脳梗塞のリスクはありますか?

長期的な副作用として、脳梗塞リスクが指摘されています。

約14,000人を対象とした研究では、手術群と比較して放射線治療群のハザード比は1.7でした。

特に、

  • 高齢者

  • 合併症のある方

では注意が必要です。

Q7. IMRTなどの高精度治療でも脳梗塞リスクはありますか?

近年はIMRTなどの高精度放射線治療が行われていますが、血管(特に内頸動脈)への線量評価は複雑です。

場合によっては血管に高線量が照射されることもあり、長期的な副作用については慎重な経過観察が必要です。

Q8. 放射線治療は歯に影響しますか?

頭頸部癌の放射線治療では口腔内や唾液腺が照射されることが多く、

  • 唾液量の低下

  • 虫歯リスクの増加

が起こります。

そのため、歯への影響は重要な問題です。

Q9. 放射線治療後に歯が失われることはありますか?

572例の研究では、放射線治療後2年間で17.8%の人が少なくとも1本の歯を失っていました。

Q10. 歯を失うリスクを減らす方法はありますか?

歯を失うリスク因子は以下でした。

  • 治療前の歯の本数が少ない

  • 唾液分泌量の低下

  • 歯の清掃不足

  • 治療前から虫歯がある

一方で、治療後に積極的に歯の清掃を行うことで、歯を失うリスクは有意に低下していました。

Q11. 頭頸部癌の放射線治療で最も長く続きやすい副作用は何ですか?

味覚障害と口渇が長期間持続しやすい副作用です。

特に口渇は回復しにくい傾向があります。

Q12. 副作用は時間とともに改善しますか?

味覚障害や口渇も含め、時間の経過とともに徐々に改善する傾向はあります。

治療後2年間の経過観察では、症状の改善がみられるケースが確認されています。

放射線治療の副作用(まとめ)

副作用を網羅的にまとめています。

参考文献

Quality of Life for Patients With Favorable-Risk HPV-Associated Oropharyngeal Cancer After De-intensified Chemoradiotherapy

Tooth Failure Post-Radiotherapy in Head and Neck Cancer: Primary Report of the Clinical Registry of Dental Outcomes in Head and Neck Cancer Patients (OraRad) Study

Affiliations
2016 Nov 1;96(3):589-96. doi: 10.1016/j.ijrobp.2016.07.007. Epub 2016 Jul 17.

Stroke After Radiation Therapy for Head and Neck Cancer: What Is the Risk?

※当サイトはAmazonアソシエイトとして、適格販売により収益を得ています。

広告