放射線治療医は今後そこまで必要なくなるのかもしれない

2017年3月30日

2016 Nov 1;96(3):493-500. doi: 10.1016/j.ijrobp.2016.02.064. Epub 2016 Mar 5.

Supply and Demand for Radiation Oncology in the United States: Updated Projections for 2015 to 2025.

 

放射線治療医は今後そこまで必要なくなるのかもしれない、という論文の紹介。

 この研究は10年後(2025年)に放射線治療が必要とされる疾患(需要)と放射線治療医の数(供給)を検討したものである。
以前に報告されているものと比較して、今回新たに検討した結果では、将来的に放射線治療が必要とされる疾患は、以前の予測ほどは増加せず、逆に放射線治療医の供給が多くなるため、相対的に放射線治療医が余るような結果になるというものであった。

これはアメリカでのデータを検討しているものであり、この結果をそのまま日本の状況にあてはめられるものではないが、同様の傾向はやがて日本にも訪れる可能性は十分にあると考えられる。
この論文の中ではアメリカでも戦後ベビーブームがあったということにも触れられており、日本だけではないのだなと感じた。

 

この研究の中で想定された結果では、以前の予測と比較して、乳癌および前立腺癌における放射線治療の需要が、そこまで伸びないというものであった。

乳癌については、放射線治療をせずに乳房をすべて取ってしまう治療が徐々に広がりつつあること、また高齢者においては乳房術後に放射線治療を行わないという選択枝も出てきていることが挙げられている。

前立腺癌については、同様に高齢者を対象にactive surveillanceという、治療を行わずに頻繁な経過観察により増悪の有無をみていくという方針が広がってきており、これらの影響により需要が予測よりも低下すると推測している。
この論文内では触れられていないが、active surveillanceについては、もともと医療費抑制という観点からも推進されているものであるが、結果的には医療費を抑制するような結果にはつながらないことも報告されており、今後再考される可能性もあるのかもしれない。
肺癌については定位放射線治療の普及により、需要は想定よりもやや増えるのではないかとしている。

 

一方で、放射線治療医については安定的に供給されており、将来的には需要を供給が上回る可能性が示唆されている。
日本で放射線治療医が十分に認知されているとは言いがたく、アメリカのように十分な医師数がいるとは言えないが、疾患についての傾向は日本でも同様に進んでいく可能性があり、将来的には放射線治療医あるいは治療施設が過剰となる場合もあるのかもしれない。
ただ、日本とアメリカでは医療制度だけでなく、病院の密度など、さまざまな面で異なるため、日本における医師数の検討も必要であろう。

最近も、新設医学部の話があり、医師の供給は徐々に増えてきている。
一方で、少子高齢化は今後確実に進む話であり、日本国内でも医師過剰となる未来が意外と近いうちにくるのかもしれない、と思う今日この頃である。

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