乳癌の寡分割照射は通常照射よりも急性期副作用が少なくQOLも高い

まとめ

乳癌術後の寡分割照射は、通常照射に比較して、急性期の副作用が少なく、QOLも改善する。

 

 解説

乳癌治療においては、乳房温存術後に放射線治療を行うのが標準治療となっている。

従来は1回2Gyを25回にわけて照射するのが一般的であったが、近年では1回2.66Gyを16回にわけて照射する寡分割照射を行うケースが増えてきている。

放射線治療は1週間に月曜~金曜までの5回照射するため、25回照射で約5週間、16回照射で約3週間の治療期間となる。

寡分割照射のメリットは上記のように回数が少なくなるため、治療期間を短くできることである。

いっぽうで、1回の照射量が多くなるため、急性期の副作用が通常照射よりも強くなるのではないかという懸念があった。

今回の研究では急性期の副作用やQOLに関して、寡分割照射の群と、通常照射の群を比較検討したものである。

結果として、治療開始後早期では寡分割照射群で急性期の副作用がやや強くなる傾向があるものの、治療開始から4-6週間程度でこの傾向は逆転し、8週時点では通常照射群のほうが副作用が強くなるという結果であった。

これは寡分割照射群のほうが、上記のように1回に照射する線量が多いため、早期では副作用が強く出やすいが、治療じたいが早めに終了するため、その影響が長期間続かないためであろうと考えられる。

つまり、副作用がそこまでひどくならないうちに治療が終了するということである。

いっぽうで通常照射は早期の副作用はそこまで強くないが、治療期間が長いため、副作用が強くなる後半の期間も長くなり、結果的にQOL(生活の質)も低下する傾向になるということである。

実際に外来で治療を行っていても寡分割照射でそこまで副作用が強い症例はあまり見かけないことから、この研究はその傾向を裏付けるものであると考える。

乳癌は比較的若年女性にも起こるため、就業しながら治療に通う場合も少なくない。そういった点で、寡分割照射は治療期間を短縮できるというメリットがあり、今回のように急性期の副作用も少ないというデータが蓄積されてくればより採用率も上がっていくのではないかと考えられる。

参考文献

Acute Toxicity and Quality of Life of Hypofractionated Radiation Therapy for Breast Cancer

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