前立腺癌治療において、ホルモン治療は短期間でも有効である

目次

1:前立腺癌治療の長期観察研究
2:ホルモン治療短期併用群の成績
3:まとめ
4:参考文献

前立腺癌治療の長期観察研究

最近では前立腺癌の治療において、特に中リスクや高リスクの前立腺癌で、ホルモン治療を併用することは比較的一般的となってきています。

しかしながら、ホルモン治療を併用した場合の長期的なフォローを行った研究の報告はまだ十分ではありません。

前立腺癌は充分に腫瘍制御を得られた場合は、その後の生存期間も長くなるため、10年後、20年後の影響の評価が必要です。

ただ、20年後の影響を評価するためには、20年間治療成績をフォローし続けなければならないため、非常に労力がかかります。

今回は1990年代後半を中心に治療された症例を対象とした研究の結果を紹介します。

ホルモン治療短期併用群の成績

今回紹介する研究では、前立腺癌に対して、放射線治療単独で治療した群と、4ヶ月のホルモン治療(ADT)を併用した群で、長期間の成績を評価しています。

ここでは放射線治療は66.6Gyを投与されています。

結果として、想定される生存期間は、放射線治療単独群で11.3年であったのに対して、ホルモン治療併用群では11.8年という結果でした。

10年目および18年目での疾患特異的な死亡率は、放射線治療単独群でそれぞれ7%、14%であり、ホルモン治療併用群ではそれぞれ3%、8%でした。

長期的な副作用についても両群ともに低確率であり、ホルモン治療で副作用が多いという傾向も見られませんでした。

まとめ

この長期観察研究によって、ホルモン治療を4か月間併用した群のほうが生存期間が約半年伸びるという結果が得られました。

現在ではホルモン治療は1年~2年程度行われることが多いですが、そこまで長期間でなくても生存に有意に良い影響があることが示されました。

20年前の治療であるため、どうしても現在の治療とは異なっている部分がいくつかある点には注意が必要です。

放射線治療の線量についても、この研究の時点では66.6Gyが投与されていますが、現在では70Gy以上を処方するのが一般的です。

この研究の結果じたいをそのまま現代の治療の成績に当てはめることはできませんが、ホルモン治療の併用が、たとえ4ヶ月という短期間であったとしても、生存期間の延長に有効であるということは言えそうです。

参考文献

Adding Short-Term Androgen Deprivation Therapy to Radiation Therapy in Men With Localized Prostate Cancer: Long-Term Update of the NRG/RTOG 9408 Randomized Clinical Trial

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