放射線治療の進歩によりリンパ腫治療における副作用は大きく減少した

目次

1:リンパ腫の放射線治療の変遷
2:治療の進歩に伴う副作用の減少
3:今後について
4:参考文献

リンパ腫の放射線治療の変遷

リンパ腫に対する放射線治療はこの数十年で大きく変化しました。

特にホジキンリンパ腫においては、1960年~70年代にはマントル照射と呼ばれる、比較的広い範囲を照射するのが一般的でした。

この時代にはCTを用いた治療計画も無かったため、レントゲンの画像をもとに照射範囲を決めていました。

そのため、症例ごとに細かい調整などは無く、もれが無いように広く当てるのが一般的でした。

ただ、広く放射線を当てると、その後の副作用が問題となります。

このため、時代を経るごとに照射範囲は徐々に小さくなっていきました。

治療計画もレントゲンではなく、CTを用いるのが一般的になり、その他のMRIやPET検査といった、より詳細に評価できる画像の情報も併せて利用できるようになりました。

治療の進歩に伴う副作用の減少

リンパ腫の副作用の評価には比較的長期間のフォローが必要です。

これは、治療技術の進歩によって多くの患者で長期生存が可能になってきましたが、その反面、長期間経過してから出てくる副作用が問題となってきたためです。

予後の長くない疾患であれば、10年後や20年後の副作用を気にする必要はそこまでありませんが、治癒が見込める疾患で、なおかつ発症年齢が比較的若い場合には長期の副作用が問題となります。

その長期的な評価を行った研究の結果がいくつか報告されているので紹介していこうと思います。

1970年代と1990年代に行った治療の比較では、全体で20%の副作用の減少が見られました。

もっとも大きかった変化は2次癌の発生率です。

2次癌とは、放射線を当てることが原因で、長期間経過したのちに発生してくる癌のことです。

35年の経過で2次癌の発生率は、1970年代の症例では10.9%であったのが1990年代では5.7%に減少していました。

この変化に影響していると考えられるのは、化学療法の併用によって、放射線線量の低減あるいは、省略です。

放射線を照射することによって2次癌が発生するため、その線量を低減することが重要であると考えられます。

別の研究では、20年間の経過観察で、マントル照射群では2次癌である乳癌の発生率が7.5%でしたが、小照射野群では3.1%であり、化学療法単独群では2.0%でした。

また、心血管系の副作用も重要な長期副作用のひとつです。

1970年代には60%の症例で、心臓への平均線量が35Gyを超えていましたが、1990年代には35Gyを超える症例は3%に減少していました。

この研究では1970年代と比較して、1990年代の治療では心血管系の副作用が有意に減少しているという結果でした。

今後について

長期の副作用というのは、それだけの観察期間が必要であり、すぐには結果が出てこない領域ですが、治療後の生活に大きな影響を与える部分でもあります。

いくつかの研究によって、治療の進歩に伴い副作用の頻度が大きく減少していることが示されています。

ここで紹介した研究の多くは新しいもので1990年代の治療でしたが、現在ではより進んだ治療が行われており、1990年代と比較しても照射される線量はより少なくなっていると考えられます。

一方で治療の強度を下げ過ぎると、逆に再発のリスクが高くなることになり、再発治療に伴う副作用も問題となります。

副作用の低減は重要ですが、むやみに弱い治療を選択するのではなく、適切な方法で治療していくことが望まれます。

参考文献

Clinical Outcomes Confirm Conjecture: Modern Radiation Therapy Reduces the Risk of Late Toxicity in Survivors of Hodgkin Lymphoma

 

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