直腸癌は手術をせずに化学放射線治療だけで治るのか?

目次

1:直腸癌の治療
2:化学放射線療法のみの治療成績は?
3:今後、手術の省略は可能なのか?
4:参考文献

直腸癌の治療

直腸癌の治療は、早期であれば大腸内視鏡で切除ができますし、ある程度進行しているようであれば手術の適応となるのが一般的です。

最近では手術の前に化学放射線療法を行うというネオアジュバント療法も一般的になってきています。

そして、この術前の化学放射線療法によって、手術をして切除はしたけれども、病変部じたいは存在しなくなっていた、いわゆる寛解例も報告されています。

つまり、この化学放射線療法のみで手術が実際には不要であったという症例も存在するというわけです。

化学放射線療法のみの治療成績は?

今回紹介するのは、化学放射線療法のみで手術を省略した場合の長期的な治療成績を評価した研究です。

51症例のT2-3、N0-1の直腸癌を対象としています。

放射線は65GyをIMRTを用いて照射しています。

一般的な術前の放射線治療では45-50Gyを照射するので、この線量は通常よりも強く当てているということになります。

結果として、治療終了時点で40症例において臨床的寛解が得られており、治療後2年で29例、3年で21例、5年で20例という結果でした。

治療後5年時点で、非再発率は31%、全生存率は85%という結果でした。

生活の質(QOL)はほとんどの項目で治療前と治療後で大きな変化は見られませんでしたが、直腸出血については治療後にQOLの低下が見られました。

 

今後、手術の省略は可能なのか?

ここで報告されている結果を受けて、手術の省略が可能かどうかを判断するのはまだまだ難しい部分があると思います。

仮に手術で完全切除ができるのであればこれよりも高い治癒率が期待できると思われるからです。

手術を省略するにしても、どのような症例において、より有効であるのかは今後さらなる評価が必要になってくると思います。

いっぽうで、今後の可能性として、外科医の減少というのはひとつの大きな問題点になってくると思われます。

最近の報道でも、外科に進む若手が少なくなっているというのはしばしば取り上げられている話題です。

現実的な問題点として、医師の足りない地域では手術を受けられないという状況が発生する可能性もありうると考えます。

また、今後高齢化していく中で、手術治療に耐えられない状況というのも少なからず出てくると思われます。

そういった状況において、手術を省略した化学放射線療法というのは一つの選択肢として挙がってくることも十分にあり得るのではないかと思いました。

参考文献

Long-Term Patient-Reported Outcomes After High-Dose Chemoradiation Therapy for Nonsurgical Management of Distal Rectal Cancer

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