乳房切除術が乳房温存術に成績で劣る可能性がある

目次

1:乳房切除術と乳房温存術
2:最近の報告
3:まとめ
4:参考文献

 

乳房切除術と乳房温存術

乳癌の治療において、乳房切除術が良いのか、乳房温存術が良いのかというのは議論のあるところです。

乳房切除術というのは乳房じたいを切除してしまう治療で、いわゆる胸は無くなってしまいます。

このため、見た目が気になる場合には、その後に乳房を再建する手術を受けたりします。

乳房温存術というのは、その名の通り、乳房を温存して残す治療で、腫瘍の部分だけを摘出します。

そして、温存術の場合は、通常その後の放射線治療がセットとなっています。

 

最近の報告

近年のいくつかの報告を解析していくと、乳房温存術のほうが乳房切除術よりも治療成績が良いかもしれないという結果が出ています。

単純に考えると、切除術は乳房じたいを取ってしまっているので、乳房を残している温存術に比べると、治療成績が優れていておかしくないのですが、現実にはそうなっていないということです。

今回紹介する論文では、なぜそのような結果になったのかを考察しています。

ひとつの可能性として、局所制御のみが治療成績に関係しているわけでは無いという点です。

ようは転移などが存在すれば、生命予後は悪くなるわけで、乳房の病変のみを制御するだけでは十分ではないという考え方です。

別の可能性としては、温存術の場合は乳房は残っているため、仮に乳房に再発したとしても、手術で切除できる余地があるという考え方です。

さらに別の可能性として、温存術の場合はその後の放射線治療がセットになっているため、放射線治療が治療成績の改善に寄与しているという点です。

切除術で乳房を取る場合と比較して、放射線治療はより広い範囲に放射線が照射されます。

この範囲は乳房のみでなく、リンパ節領域も含まれます。

つまり、放射線治療が広範囲に行われることにより、潜在的な腫瘍を制御し、治療成績が改善しているということです。

また、近年では放射線治療じたいも進歩してきており、周囲の正常臓器の被曝ができるだけ少なくなるように治療することが可能となってきています。

また、切除術における手術の難しさもひとつの要因の可能性があります。

単純に乳房を切除するだけであれば、そこまで問題ないのかもしれませんが、できるだけ見た目にこだわる場合には、乳頭を温存したり、周囲組織を一部温存する場合があります。

組織を温存して切除する場合には、どうしても腫瘍細胞が残存しているリスクが出てくるため、結果として腫瘍制御が悪くなるかもしれないということです。

 

まとめ

乳房切除術と乳房温存術を比較した場合、乳房温存術のほうが治療成績が良い可能性があることが近年報告されています。

その要因の一つとして、放射線治療が予後改善に寄与している可能性があります。

 

参考文献

Mastectomy May Be an Inferior Oncologic Approach Compared to Breast Preservation

広告