乳癌術後の上肢リンパ浮腫とは? リスク因子と発症時期をわかりやすく解説
乳癌治療後の副作用のひとつに上肢リンパ浮腫があります。
リンパ浮腫は一度発症すると改善が難しく、日常生活に影響を及ぼすことがあるため、生活の質(QOL)を低下させる重要な症状です。
発症頻度は報告によって幅があり、
約5~6%程度とする報告から、50%程度とする報告までさまざまです。
この差は、診断基準の違いなどによる影響もあると考えられます。
この記事では、
乳癌術後リンパ浮腫のリスク因子
どの治療がどの程度影響するのか
リンパ浮腫が起こりやすい時期
について整理して解説します。
乳癌術後リンパ浮腫の主なリスク因子
乳癌の治療は、病状に応じてさまざまな方法が選択されます。
その中で、リンパ浮腫の発症に関係すると考えられている治療は次の3つです。
腋窩リンパ節郭清(ALND)
センチネルリンパ節生検(SLNB)
所属リンパ節への放射線照射(RLNR)
さらに、
BMI高値(肥満)
感染
上肢の受傷(けが)
もリスク因子として報告されています。
治療法ごとの発症率(5年間の経過観察)
治療内容の違いによって、リンパ浮腫の発症率は大きく変わります。
■ 腋窩リンパ節郭清(ALND)+リンパ節領域照射(RLNR)
→ 約30~31%
もっともリスクが高い組み合わせです。
■ 腋窩リンパ節郭清(ALND)のみ
→ 約25%
ALND単独でも高い発症率が見られます。
■ センチネルリンパ節生検(SLNB)のみ
または
■ SLNB+放射線治療(リンパ節切除なし)
→ 約10~12%
大きな差はなく、比較的リスクは低いとされています。
重要なポイント
腋窩リンパ節郭清(ALND)が最も強いリスク因子
ALNDに放射線治療(RLNR)が加わると、さらに発症率が上昇する
このことから、術後リンパ浮腫に最も影響する治療はALNDであると考えられます。
リンパ浮腫はいつ起こるのか?(発症時期)
リンパ浮腫は、治療内容によって発症しやすい時期が異なります。
早期(術後3か月~1年)
早期のリンパ浮腫には、腋窩リンパ節郭清の有無が大きく影響します。
特にALNDのみの群では、
術後6~12か月が発症リスクの高い時期と報告されています。
手術によるリンパ浮腫は、
手術そのものがリンパの流れを妨げるため、比較的早い時期に起こると考えられます。
晩期(術後1年以降)
晩期のリンパ浮腫には、リンパ節領域への放射線照射(RLNR)が影響します。
ALND+放射線治療を行った群では、
18~24か月の時期に多く発生しています。
また、
SLNB+放射線治療群では、
36~48か月が最もリスクの高い時期でした。
放射線によるリンパ浮腫は、
放射線によって組織が徐々に繊維化し、リンパ流が妨げられることで起こると考えられています。
組織の繊維化には時間がかかるため、
手術よりも遅れて発症する傾向があります。
発症のピーク
多くの症例は術後5年以内に発症
それ以降の発症は稀と考えられます
全体としては治療後12~30か月が発症しやすい時期と報告されています
BMI高値(肥満)は早期・晩期いずれのリスク因子にもなります
まとめ
乳癌術後のリンパ浮腫の主なリスク因子は以下の通りです。
腋窩リンパ節郭清(ALND)
リンパ節領域への放射線治療(RLNR)
センチネルリンパ節生検(SLNB)
肥満(BMI高値)
感染
上肢の受傷
特に、
ALNDは最も影響が大きい因子
手術によるリンパ浮腫は比較的早期(術後1年以内)に起こりやすい
放射線治療によるリンパ浮腫は遅れて(術後1年以降)発症することが多い
という特徴があります。
治療法はがんの状態によって決定されるため、
リンパ浮腫を避ける目的だけで治療法を変更する場面は少ないと考えられます。
しかし、
「どの治療で、どの程度の副作用リスクがあるのか」
「いつ頃注意が必要なのか」
を知っておくことは、治療後の生活を考えるうえで有用です。
乳癌術後の放射線治療に関して、治療成績などの記事はこちら
乳癌術後の放射線治療の役割や治療選択全体については、別記事で詳しくまとめています。治療の全体像を知りたい方はあわせてご覧ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 乳癌術後のリンパ浮腫はどのくらいの頻度で起こりますか?
乳癌術後のリンパ浮腫の発症頻度は、報告によって幅があります。
約5~6%程度とする報告から、50%程度とする報告までさまざまです。
診断基準の違いなどによっても頻度は変わると考えられています。
Q2. 乳癌術後リンパ浮腫の主なリスク因子は何ですか?
主なリスク因子は以下の通りです。
腋窩リンパ節郭清(ALND)
リンパ節領域への放射線照射(RLNR)
センチネルリンパ節生検(SLNB)
BMI高値(肥満)
感染
上肢の受傷(けが)
特に腋窩リンパ節郭清(ALND)は、最も影響の大きい因子とされています。
Q3. どの治療法でリンパ浮腫のリスクが最も高くなりますか?
腋窩リンパ節郭清(ALND)を行い、さらにリンパ節領域へ放射線照射(RLNR)を行った場合が最もリスクが高いと報告されています。
5年間の経過観察では、およそ30~31%の人にリンパ浮腫が発症しました。
Q4. 腋窩リンパ節郭清(ALND)のみの場合の発症率はどのくらいですか?
ALNDのみを行った場合、5年間で約25%の人にリンパ浮腫が見られました。
このことから、ALNDは術後リンパ浮腫に最も影響する治療と考えられています。
Q5. センチネルリンパ節生検(SLNB)のみの場合のリスクは高いですか?
センチネルリンパ節生検(SLNB)のみ、あるいはリンパ節切除を行わず放射線治療を行った群では、5年間で約10~12%の発症率と報告されています。
ALNDと比較すると、リスクは低いとされています。
Q6. リンパ浮腫はいつ頃起こりやすいですか?
全体としては、治療後12~30か月の間が発症しやすい時期と報告されています。
ただし、治療内容によって発症時期は異なります。
Q7. 手術後のリンパ浮腫はいつ頃起こりますか?
腋窩リンパ節郭清(ALND)によるリンパ浮腫は、比較的早期に発症する傾向があります。
特に術後6~12か月がリスクの高い時期と報告されています。
手術によりリンパの流れが妨げられることが原因と考えられています。
Q8. 放射線治療によるリンパ浮腫はいつ起こりますか?
リンパ節領域への放射線照射(RLNR)によるリンパ浮腫は、術後1年以降に発症することが多いとされています。
ALNDと放射線治療を両方行った場合は、18~24か月に多く見られました。
SLNBと放射線治療を行った群では、36~48か月が最もリスクの高い時期でした。
放射線による組織の繊維化が、時間をかけてリンパ流を妨げるためと考えられています。
Q9. 術後何年くらい注意が必要ですか?
ほとんどの症例は術後5年以内にリンパ浮腫が発症しています。
それ以降に発症するものは稀と考えられています。
Q10. リンパ浮腫を避けるために治療法を変更することはありますか?
乳癌の治療法は、がんの状態によって決定されます。
リンパ浮腫を避けることのみを目的として治療法を変更する場面は少ないと考えられます。
ただし、治療法ごとの副作用のリスクや発症時期を理解しておくことは重要です。
参考文献
Timing of Lymphedema After Treatment for Breast Cancer: When Are Patients Most At Risk?
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