前立腺癌の放射線治療において寡分割照射が増えてきている
まとめ
解説
前立腺癌の放射線治療においてはIMRTを用いて治療するのが一般的となっている。
最近では1回の線量を増やす形で、治療の回数を減らす方法(寡分割照射)も採用されるようになってきている。
治療の回数が減れば通院期間も短くて済み、また医療費についても少なくなる可能性がある、というメリットがある。
特に近年のCOVID-19感染においては長期間の通院期間の場合は、その間に感染してしまうと治療を中断するリスクもあるため、より短期的な照射というのは社会的にもメリットがあると考えられる。
この文献ではオーストラリアにおけるデータベースを解析しており、日本でのものではない。
残念ながら、日本では放射線治療における詳細なデータベースというのは存在しないため、このような解析は不可能ではないかと思う。
国が異なるため、今回の傾向を厳密に日本に当てはめることはできないが、同様の傾向が日本でも見られる、あるいは将来的にその傾向になっていくという可能性は十分にあると考えられる。
文献では2014年時点では寡分割照射の採用率は5.2%であったのに対して、2018年時点では40.3%まで上昇していた。
これはコロナ禍以前のデータであり、コロナ感染の有無にかかわらず、寡分割照射が広く採用されている傾向が見て取れる。
ちなみにここでは1回の線量が1.8Gy-2.3Gyのものを標準治療、2.4Gy-3.4Gyのものを寡分割照射としている。
寡分割照射であれば治療の回数を10-15回程度少なくすることができる。
寡分割照射が選択される要因としては、どの治療医が行ったか、どの施設で受けたのか、そして治療施設までの通院距離が挙げられている。
海外では日本に比べると放射線治療を受けられる施設が少なく、いわゆる地域の拠点病院までいかないと受けられないことは少なくない。このため、通院距離が日本よりも相対的に長く、通院の負担を減らす意味で寡分割照射が選択されるというのは理解できるところである。
また、治療方針が医師や施設に大きく依存しているというのも興味深いところである。
寡分割照射がつねに正しい選択肢だとは思わないが、傾向としては先進的な施設においてより早期から選択されているのではないだろうか。
また、施設に依存する点に関しては、治療回数が少なくなれば、それだけたくさんの患者を治療することができるということであり、患者数の多い大規模な病院でより採用される可能性があるのではないかと思われる。
日本ではまだ40%までの採用率は無いと思われるが、今後前立腺癌の放射線治療において、寡分割照射の採用率がより高まってくる傾向はあるのではないかと考えさせられる文献である。
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