2019年度の日本医学放射線学会総会に参加して思うこと

2019年4月20日

4月11日から14日にかけて日本医学放射線学会がパシフィコ横浜で開催した第78回総会に参加してきたので、その感想を書いていきたいと思います。
私は日常臨床で放射線治療に携わっている立場からの視点になります。

1:人が多すぎる

まず、なんといっても人が多すぎました。
これは行く前からある程度予想できていたことではあるのですが、実際に参加して改めて強く感じました。

医療界で最近話題になっている新専門医制度への移行が背景にあります。
これは、これまで学会独自に認めていた「専門医」という資格の認定を、専門医機構という新たな組織に管理をまかせることで、専門医の質の均質化をはかろうというものです。
学会ごとに基準が異なることを是正するという点では、一定の合理性がある制度だと感じます。

一方で、制度設計や運用については現場からさまざまな意見が出ているのも事実です。

そして、この新しい制度の影響により、今後の「専門医」の取得、継続がこれまでよりも実質厳しくなりました。
厳しくなったといっても取得が不可能というわけではありませんが、条件クリアのためにこれまで以上の時間と労力が必要になっています。

その代表例が学会参加と教育講演の受講です。
要は、これまで以上に学会へ参加し、指定された講演を受講する必要があります。
この結果、多くの医師が同じ講演に集中することは想像に難くありません。

さらに、この指定講演は同時間帯に十分な数がありません。
同時間帯に10講演あるとすれば、指定講演は2〜3程度です。
そのため一部の講演に人が集中し、他の講演は空席が目立つという状況でした。

会場は広めに設定されていることが多いのですが、それでも席が足りず、立ち見や通路での聴講も見られました。
教育の質という観点からも、改善の余地があると感じました。

本来、学会は研究発表が中心であり、その中に教育講演が配置される形が望ましいと思います。
研究発表の重要性が相対的に低下すると、研究活動全体への影響も懸念されます。

お昼についても同様でした。
ランチョンセミナーは整理券制でしたが、取得のためには早朝から並ぶ必要がありました。
私は治療領域ということもあり、対象講演が少なく競争が激しかったのだと思います。

しかし、整理券のためだけに早朝から並ぶというのは、本来の学術活動とは少し方向が違う印象もありました。

全体として、現状は必ずしも理想的な形とは言えず、今後の改善が期待される部分だと感じました。

2:聴きたい講義が聴けない

前項とも関連しますが、指定講演の受講が優先されるため、興味のある発表に参加できないという問題がありました。

単位を重視しなければよいという考えもありますが、そうすると更新条件を満たすために追加の学会参加が必要となります。
学会費や交通費、時間的負担を考えると、現実的には難しい場合も多いでしょう。

せっかくの学会参加で知識を広げる機会が制限されることは、やや本末転倒であると感じました。

3:放射線治療領域の扱い

この総会は放射線診断と放射線治療の合同学会です。
しかし実際には、診断領域の比率が大きいのが現状です。

医師数の差もあり、診断専門医が約5000名、治療専門医が約1000名とされています。
そのため講演数の偏り自体はある程度仕方ない部分もあります。

一方で、放射線治療医の専門医更新に必要な単位の多くがこの総会に依存している点は課題と感じました。
治療専門の学会でも単位取得が可能ではありますが、その比率はまだ十分とは言えません。

今後、放射線治療の重要性が高まる中で、制度面でもバランスが改善されることを期待しています。

4:AIの話題

最近の大きなトピックは人工知能(AI)です。
今回もAI関連の講演は非常に多く、特に診断領域での議論が活発でした。

一方で、放射線科領域におけるAI活用の難しさについても触れられていました。
画像診断は病理と異なり、画像所見から間接的に判断するため、学習の難易度が高いとされています。

またAI開発には、画像だけでなく病理や臨床情報を統合したデータが必要となるため、データ構築自体が課題です。

5:がん治療における新たな話題

放射線治療におけるAI

診断に比べると、治療領域へのAI導入はまだ発展途上という印象でした。
個人的には、照射前の位置確認画像から自動で臓器認識を行い、線量分布を適応的に変える技術に期待しています。
数年以内の実用化も期待されますが、臨床普及には時間がかかる可能性があります。

個別化治療

患者ごとの特性に応じた個別化治療の重要性はさらに高まっています。
遺伝子解析やリキッドバイオプシーの進歩により、腫瘍の層別化が進んでいます。
抗がん剤領域に比べると遅れていますが、放射線治療にも波及していくと考えられます。

免疫放射線療法

免疫療法と放射線治療の併用は、PACIFIC trial以降も研究が続いています。
今後の治療戦略の重要な柱になる可能性があり、継続的な動向把握が必要です。

アブスコパル効果についての記事はこちら

免疫治療と放射線治療を組み合わせることで、離れた病変まで治療をすることができるアブスコパル効果というものがあります。

オリゴ転移

オリゴメタスタシスは近年重要な概念となっています。
今回もより広い適応や多発病変への応用など、新しい議論が多く見られました。

免疫療法や全身治療の進歩により、転移があっても長期生存を目指す時代になりつつあります。
すべての症例が対象ではありませんが、がん治療の可能性は確実に広がっていると感じました。

オリゴ転移の記事はこちら

オリゴ転移について分かりやすく解説しています。

6:まとめ

制度面では改善の余地を感じる部分もありましたが、講演内容は全体として非常に興味深いものでした。
AIや新規治療に関する議論は刺激的で、日常診療のモチベーションにもつながりました。

今後も最新の知見を臨床に還元できるよう、継続して学会に参加していきたいと思います。

 

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