内胸リンパ節領域照射後の虚血性心疾患のリスクについて
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2017 Dec 1;99(5):1146-1153. doi: 10.1016/j.ijrobp.2017.06.2459. Epub 2017 Jun 27.
Ischemic Cardiac Events Following Treatment of the Internal Mammary Nodal Region Using Contemporary Radiation Planning Techniques.
Dess RT1, Liss AL1, Griffith KA2, Marsh RB1, Moran JM1, Mayo C1, Koelling TM3, Jagsi R1, Hayman JA1, Pierce LJ4.
内胸リンパ節領域照射後の虚血性心疾患のリスクについて。
今回の論文は、乳癌術後の放射線治療において、内胸リンパ節領域を照射したあとの虚血性心疾患リスクの上昇の有無を評価したものである。
内胸リンパ節領域は標準的に照射されるわけではないが、多数のリンパ節転移を認める場合や、内胸リンパ節領域にもともと転移リンパ節が存在した例などでは治療の対象となる。
この場合に問題となるのが、照射範囲が広くなることで、結果として副作用のリスクがあがることである。
今回はその中でも虚血性心疾患に着目して検討している。
心臓が照射野に入る場合には将来的な心疾患のリスクがわずかに上がると報告されており、治療範囲を広げることで、より多くの領域の心臓が照射されるため、心血管リスクが増す可能性があるからである。
一般的に心臓への照射は左側の乳房を治療対象にしたときに問題となる。
結論から言うと、10年間の経過観察で、内胸リンパ節領域を照射した例で、有意な虚血性心疾患のリスク増加は見られなかった。
このため、内胸リンパ節領域への照射は、心血管リスクに対して有意な影響は無いと考えられる。
注意点としては、放射線治療後の虚血性心疾患リスクの増加は、治療後5年後からはじまり、20年後まで増加し続けると考えられている。
今回の論文では、経過観察期間の中央値が10年であるため、このリスクを十分に評価できていない可能性がある。
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