乳癌患者における内胸リンパ節(傍胸骨リンパ節)をどのように定義すべきか
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2017 Mar 15;97(4):762-769. doi: 10.1016/j.ijrobp.2016.11.037. Epub 2016 Nov 27.
Delineation of Internal Mammary Nodal Target Volumes in Breast Cancer Radiation Therapy.
Jethwa KR1, Kahila MM1, Hunt KN2, Brown LC1, Corbin KS1, Park SS1, Yan ES1, Boughey JC3, Mutter RW4.
乳癌において内胸リンパ節(傍胸骨リンパ節)をどのように定義するかを検討した論文。
今回の研究では、乳癌患者で実際に内胸リンパ節が腫大していた症例をピックアップして、それぞれの位置と、RTOGなどで規定されている領域との比較を行ったものである。
RTOGでは内胸リンパ節を第1~第3肋間の、内胸静脈周囲と規定している。
一方で、今回の研究では、この領域のみでは不十分であり、頭側および尾側、また左右についてもそれぞれ領域を広げる必要があると主張している。
具体的な図が論文中には掲載されているので、そちらを見ていただけるとより直感的に理解できると思われる。
以前の別の研究ではRTOGの鎖骨上窩の規定についても、必要な領域が十分に含まれていないと報告しているものがあったかと思う。
リンパ節領域をどこまで広げるのかは議論のつきないところではある。
照射する範囲を広くすれば、必然的に制御率を上げることができるが、問題となるのはそれに伴う副作用の増加である。
今回の内胸リンパ節については、特に左側の乳癌において、心臓への線量増加をきたし、将来的な心血管障害のリスク要因となりうるため、慎重に考える必要がある。
実臨床においては内胸リンパ節を照射する症例はまだまだ限定的である。
現時点では、実際に内胸リンパ節転移のある症例において、領域をRTOGの規定よりも広げるかどうか考慮する必要があるであろう。
ただし、今後術前の化学療法(NAC)が普及するにつれて、進行癌に対する照射も増加してくる可能性があり、その際には内胸リンパ節領域の照射についても考慮する必要のある症例も出てくるものと考える。
今回の研究のlimitationとしては、リンパ節の評価は画像上のリンパ節径を基準としており、病理学的に転移が証明されているわけではないという点が挙げられているため、結果の解釈には注意が必要である。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません