照射範囲はなぜもともとの病気よりも広いのか

2017年3月15日

前回の記事で、放射線治療の照射範囲(「照射野」)が意外に広いという内容を書きました。

今回はその補足で、なぜ照射範囲が広くなってしまうのかを書こうと思います。

 

①病気は目に見える範囲だけでなく、見えない場所まで広がっている。

病気(多くの悪性腫瘍)は目に見えている部分だけを治療すれば治るわけではありません。たとえば、手術では切り取った部分を顕微鏡の検査に出して、残っていないか確認するわけですが、この顕微鏡で確認して残っていないとなっても、その後に治療が必要となることはあります。これは、顕微鏡の検査でもわからないレベルで病気が広がってしまっているからです。そして、広がっているかどうかを調べる手段というのは現在のところありません。このため、広がっているかもしれないという前提で治療をおこなうわけです。

ただ、やみくもに広い範囲を治療すれば、そのぶん副作用も増えてしまうため、広がりやすい範囲を知る必要があります。

病気が広がりやすいのは、もちろん病気自体の周りです。このため、病気自体にある程度の広がりをもって治療していくことになります。

もうひとつ病気が広がりやすいのはリンパ組織です。リンパ組織は体中に存在する免疫をつかさどる場ですが、癌の細胞はこのネットワークにのって広がっていきやすく、リンパ節という部分に病気が飛んでいくことがあります。このため、病気によってはこの飛びやすいリンパ節(仮に検査ではそこに病気が無くても)も含めて放射線で治療します。

 

②病気の位置は体の中でいつも同じではない。

体の組織はつねに動いています。仮にベッドの上でじっとしていても、呼吸をする必要がありますし、腸などが動いてしまうのを意識して止めることはできません。場合によっては、食事の量や便の量によっても周りの組織が押されて動いてしまう場合があります。

放射線治療はこうした「動き」に対応する必要があります。もし、もともと想定した位置から動いてしまっていた場合に、この「動き」を考えていないと必要な場所に放射線が当たらずに、関係ない場所に放射線が当たってしまうという結果になってしまうからです。

この「動き」というのは1回の治療の間でも起こりますし、1回ごとでも体の位置は微妙にちがうため「動き」が発生します。

これらの「動き」を考慮して、ある程度の余裕をもって放射線を当てていくことになります。

 

以上の要因から、放射線治療ではもともとの病気よりも広い範囲が照射されることになり、思っているよりも広い範囲に副作用が出るということになります。

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