非小細胞肺癌において予防的全脳照射が脳転移の発生と生存率を改善する
まとめ
解説
原発性肺癌は脳転移をきたしやすい疾患である。
これまでの報告では肺癌患者の40%で将来的に脳転移が発生すると報告されている。
そして、脳転移の発生は患者のQOL(生活の質)を低下させ、生命予後も悪化する。
一般的に脳転移と診断された場合の生命予後は約半年程度と言われている。
このため、肺癌患者における脳転移の予防、治療は非常に重要な要素となっている。
小細胞肺癌においては化学療法で原発巣に治療効果が認められた場合には、その後、予防的に全脳照射を行うことが一般的である。
いっぽうで非小細胞肺癌において、予防的な全脳照射を行うということは一般的には行われていない。
今回の報告は、非小細胞肺癌における予防的全脳照射の有効性を検討したものである。
この研究では非小細胞肺癌の中でも、脳転移発生のハイリスク群を対象としている。
ハイリスクと考えられるものは、若年、腺癌、EGFR変異、ALKrを有する症例としている。
全脳照射は25Gyを10回にわけて照射する形で、これは小細胞肺癌における治療と同様である。
また、照射においては海馬の線量を低減するように照射を行っている。
これは海馬は記憶に関連する領域であり、全脳照射で海馬が照射されると数年後の認知機能障害がQOLを低下させるためである。
結果として、予防的全脳照射を行った群では有意に脳転移の発生が減少し、また生存にも改善が見られた。
非小細胞肺癌においても、ハイリスク症例に限れば予防的全脳照射は有効であるという結果であった。
今後、症例の選択は必要になるが、非小細胞肺癌でも予防的全脳照射を行う流れになるのではないかと思われる。
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