放射線治療の嚥下障害|原因・症状・対処法を専門医が解説

2026年4月13日

患者

放射線治療のあと、食べ物が飲み込みにくい気がします…
これって副作用なのでしょうか?

放射線治療医

はい、嚥下障害(えんげしょうがい)と呼ばれる症状の可能性があります。
特に
頭頸部の放射線治療
では起こることがあります。
ただし、原因や対処法を知ることで改善できる場合も多い副作用です。
この記事でわかりやすく解説します。

放射線治療では、治療する部位によってさまざまな副作用が起こることがあります。
その中でも頭頸部の放射線治療で比較的よく見られる症状の一つが「嚥下障害(えんげしょうがい)」です。

嚥下障害とは、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる状態を指します。

  • 食事のときにむせる
  • 食べ物が喉につかえる
  • 飲み込みに時間がかかる
  • 食後に咳が出る

このような症状がある場合、嚥下障害が起きている可能性があります。

この記事では、放射線治療による嚥下障害の原因・症状・治療・対策について、国際ガイドラインや最新研究の知見をもとに、放射線治療専門医がわかりやすく解説します。

関連記事

まずは放射線治療の副作用全体について知りたい方は
[放射線治療の副作用まとめ]


放射線治療による口や喉の副作用の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。

放射線治療の頭頸部の副作用まとめ


患者

どうして放射線治療で
飲み込みにくくなるのでしょうか?

放射線治療医

嚥下には舌・喉・食道の筋肉や神経が関わっています。
放射線の影響でこれらの働きが一時的に弱くなることがあります。
主な原因は
粘膜炎・唾液減少・筋肉の硬化(線維化)です。


放射線治療で嚥下障害はなぜ起こるのか

嚥下(えんげ)とは、口から食べ物を取り込み、咽頭・食道を通して胃に送る動作です。

この動作には

  • 咽頭筋
  • 喉頭
  • 食道

など多くの筋肉や神経が関わっています。

放射線治療では、これらの組織に以下の変化が起こることで嚥下障害が発生します。

粘膜炎

放射線により咽頭や口腔の粘膜が炎症を起こします。

これにより

  • 痛み
  • 飲み込みにくさ
  • 食事量の低下

が起こります。

➡ 関連記事:放射線治療による口内炎


唾液分泌低下(口腔乾燥)

唾液腺が放射線の影響を受けると唾液が減少します。

唾液は

  • 食べ物をまとめる
  • 飲み込みやすくする

重要な役割があります。

➡ 関連記事:放射線治療による口の渇き


筋肉の線維化

放射線の影響で

咽頭の筋肉が硬くなる(線維化)

ことがあります。

これにより

  • 飲み込みの動きが弱くなる
  • 食べ物が残る

などが起こります。

これは晩期副作用として数か月〜数年後に起こることもあります。

関連記事

※放射線治療の急性副作用について全体を知りたい方は
放射線治療の急性副作用まとめ|治療中〜治療後数週間の症状もご覧ください。


嚥下障害が起こりやすい放射線治療

嚥下障害はすべての放射線治療で起こるわけではありません。

特に多いのは以下の治療です。

頭頸部がんの放射線治療

  • 咽頭がん
  • 喉頭がん
  • 舌がん
  • 口腔がん

など

これらの治療では嚥下に関わる筋肉や粘膜が照射されるため、嚥下障害が起こることがあります。

近年は

  • IMRT(強度変調放射線治療)
  • 唾液腺温存治療

などにより、副作用の軽減が進んでいます。

参考:
National Comprehensive Cancer Network
https://www.nccn.org

頭頚部癌の放射線治療についてはこちらの記事で解説しています。


患者

最近、食事中にむせたり
喉につかえる感じがします…

放射線治療医

それは嚥下障害のサインかもしれません。
よくある症状を確認してみましょう。


嚥下障害の主な症状

嚥下障害では以下の症状が見られます。

よくある症状

  • 食事中にむせる
  • 食べ物が喉につかえる
  • 食事に時間がかかる
  • 食後に咳が出る
  • 食べ物が鼻に戻る
  • 声が濁る

これらの症状がある場合、誤嚥(ごえん)の可能性があります。

誤嚥とは、食べ物が気管に入ることです。

誤嚥が続くと

  • 誤嚥性肺炎
  • 栄養低下

などにつながることがあります。


嚥下障害の検査

嚥下障害が疑われる場合、以下の検査が行われることがあります。

嚥下造影検査(VF)

造影剤を含む食べ物を飲み込み、

レントゲンで嚥下の動きを確認する検査

です。


嚥下内視鏡検査(VE)

鼻から内視鏡を入れ、

咽頭や喉頭の動き

を観察します。


嚥下障害の治療とリハビリ

患者

飲み込みにくい場合、
もう治らないのでしょうか…?

放射線治療医

多くの場合、嚥下リハビリで改善する可能性があります。
特に早く始めるほど効果が期待できます。
最近は放射線治療中から嚥下体操を行うことも推奨されています。

嚥下障害は早期からリハビリを行うことで改善することが多いとされています。

国際的なガイドラインでも、早期の嚥下リハビリが推奨されています。

参考:
American Society of Clinical Oncology
https://www.asco.org


嚥下リハビリ

言語聴覚士(ST)が中心となり

  • 舌の運動
  • 咽頭筋トレーニング
  • 嚥下体操

などを行います。

研究では

放射線治療中からリハビリを開始すると嚥下機能が保たれやすい

ことが報告されています。


食事の工夫

嚥下障害がある場合、食事の形態を調整します。

  • とろみをつける
  • やわらかい食事
  • 小さく切る

などです。

とろみ剤

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とろみ飲料

最初からとろみがついている嚥下対応飲料。水分補給が難しい患者向け。


栄養サポート

食事量が減る場合

  • 栄養補助食品
  • 経腸栄養

などを行うことがあります。

栄養補助食品

食事量が減った場合は、栄養補助飲料などを利用することもあります。


嚥下障害を予防するために重要なこと

研究では、以下が重要とされています。

治療中も口から食べる

可能な範囲で口から食べ続けることは嚥下機能の維持に重要とされています。


嚥下体操

簡単な体操でも継続することで

筋肉の低下を防ぐ

可能性があります。

嚥下トレーニング器具

嚥下機能を維持するためには、舌や口の筋肉を鍛えるトレーニングが役立つことがあります。
医療・介護の現場でも使われている嚥下トレーニング器具を使うことで、自宅でも簡単に口腔トレーニングを行うことができます。


早めに相談する

以下の場合は早めに医師に相談してください。

  • 食事でむせる
  • 食事量が減る
  • 体重が減る

患者

嚥下障害がある場合、
どう対応するのが一番よいのでしょうか?

放射線治療医

症状を我慢せず、早めに医療スタッフへ相談することが重要です。
適切なリハビリや食事調整で改善するケースも多くあります。
放射線治療専門医の視点から、
この副作用について重要なポイントをまとめます。


専門医コメント

放射線治療による嚥下障害は、特に頭頸部がん治療で重要な副作用の一つです。

ただし近年は

  • IMRTなどの精密放射線治療
  • 嚥下リハビリ
  • 栄養サポート

などにより、嚥下機能を保ちながら治療を行うことが可能になってきています。

大切なのは

症状を我慢せず、早めに医療スタッフに相談することです。

嚥下障害は適切な対応により改善できる場合も多いため、早期対応が非常に重要です。

関連記事

放射線治療では、口や喉にさまざまな副作用が起こることがあります。
口内炎・味覚障害・口の渇き・嚥下障害など、頭頸部の副作用についての全体像は以下の記事でまとめて解説しています。

放射線治療の頭頸部の副作用まとめ


まとめ

放射線治療による嚥下障害は、主に頭頸部の治療で起こる副作用です。

原因には

  • 粘膜炎
  • 唾液減少
  • 筋肉の線維化

などがあります。

しかし

  • 嚥下リハビリ
  • 食事の工夫
  • 栄養サポート

などにより改善することも多く、早期対応が重要です。

➡ 副作用全体の解説はこちら:放射線治療の副作用まとめ


FAQ(よくある質問)

放射線治療で嚥下障害はよく起こりますか?

主に頭頸部の放射線治療で起こることがありますが、すべての患者さんに起こるわけではありません。

嚥下障害はいつ頃から起こりますか?

治療中から起こることもあれば、治療後数か月〜数年後に起こることもあります。

嚥下障害は治りますか?

嚥下リハビリなどにより改善することが多いですが、症状の程度によって異なります。

むせるのは危険ですか?

誤嚥の可能性があるため、医師に相談することが重要です。

嚥下リハビリは誰が行いますか?

言語聴覚士(ST)が中心となって行います。

食事はどのように工夫すればよいですか?

とろみをつけたり、やわらかい食事にするなどの工夫が有効です。

嚥下障害があると肺炎になりますか?

誤嚥が続くと誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

放射線治療中に食事をやめた方がよいですか?

可能な範囲で口から食べ続けることが嚥下機能の維持に重要です。

嚥下障害は予防できますか?

嚥下体操やリハビリで予防できる可能性があります。

いつ医師に相談すべきですか?

むせる、食事量が減る、体重が減る場合は早めに相談してください。


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  この記事の執筆者

放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。

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