放射線治療で口が渇く?(口腔乾燥・唾液減少)原因・対策・治るまでを専門医が解説

放射線治療を始めてから、
口がすごく乾くんです…。
これって副作用なのでしょうか?

はい、頭頸部の放射線治療では唾液が減ることで口が乾く副作用が起こることがあります。
ただし現在は治療技術の進歩で、
以前よりかなり軽減できるようになっています。
放射線治療を受けている患者さんからよく聞かれる症状のひとつが、「口の渇き(口腔乾燥)」です。
・水を飲んでもすぐ乾く
・食べ物が飲み込みにくい
・話しにくい
・夜中に何度も水を飲む
この症状は、頭頸部への放射線治療で唾液腺が影響を受けることで起こる副作用です。
ただし現在では
- IMRTなどの高精度放射線治療
- 唾液腺温存技術
- 口腔ケア
により、以前より大きく軽減できるようになっています。
この記事では
- なぜ口が渇くのか
- どのくらい続くのか
- 自宅でできる対策
- 治療方法
を、放射線治療専門医の立場から、国際ガイドラインや研究をもとに解説します。
関連記事
放射線治療による口や喉の副作用の全体像については、以下の記事でまとめて解説しています。
放射線治療で口が渇く原因

唾液が減るって、放射線で口の中が傷つくからですか?

実は口の中というより、
唾液を作る『唾液腺』が放射線の影響を受けることが原因です。
特に耳の近くにある耳下腺が影響を受けると、
唾液量が減りやすくなります。
放射線治療による口の渇きは、唾液腺の機能低下が原因です。
主に影響を受けるのは次の唾液腺です。
- 耳下腺
- 顎下腺
- 舌下腺
これらの唾液腺が放射線の影響を受けると
- 唾液量の低下
- 唾液の粘度上昇
- 唾液の抗菌作用低下
が起こります。
その結果
- 口の乾燥
- 食事の飲み込みづらさ
- 虫歯増加
- 味覚低下
などが起こることがあります。
参考
NCCN Head and Neck Cancer Guidelines
MASCC supportive care guideline
外部リンク
https://www.nccn.org
https://mascc.org
どの治療で起こりやすい?

すべての放射線治療で起こるのでしょうか?

いいえ。
頭頸部がんの放射線治療で特に起こりやすい副作用です。
体の別の場所への放射線治療では、通常この症状は起こりません。
口の渇きは特に以下の治療で起こりやすいです。
頭頸部がんの放射線治療
代表例
- 咽頭がん
- 喉頭がん
- 口腔がん
- 鼻副鼻腔がん
- 唾液腺がん
→頭頚部癌の放射線治療についてはこちらの記事で解説しています。
症状の特徴
よくある症状
- 口の中が乾く
- 水を頻繁に飲みたくなる
- 食べ物が飲み込みにくい
- パンなど乾いた食べ物が食べづらい
- 夜間に目が覚める
また次の症状が合併することもあります。
- 味覚障害:放射線治療の味覚障害
- 口内炎:放射線治療の口内炎
いつから起こる?
多くの場合
治療開始2〜3週後
から症状が出始めます。
唾液量は
治療終了時に最も低下
することが多いとされています。
治るまでの期間
回復には個人差があります。
一般的には
数か月である程度回復
研究では
- 6か月〜1年で改善する例が多い
とされています。
参考研究
Eisbruch et al.
IJROBP
関連記事
放射線治療後に起こるさまざまな晩期副作用については、以下の記事でまとめて解説しています。

この口の渇きって、
治療が終わったら元に戻るのでしょうか?

多くの患者さんで時間とともに唾液は回復します。
ただし回復の程度には個人差があり、
数か月〜1年以上かけて改善することもあります。
放射線治療後、唾液はどこまで回復する?
放射線治療による口の渇き(口腔乾燥)は、完全に元通りになる場合もあれば、一部だけ回復する場合もあります。
回復の程度は主に次の要因で決まります。
- 照射された唾液腺の線量
- IMRTなどの唾液腺温存の有無
- 年齢
- 個人差
特に重要なのは、耳下腺にどの程度の放射線が当たったかです。
研究では
- 耳下腺平均線量 26Gy以下
に抑えられると、唾液分泌が回復しやすいとされています。
参考研究
Eisbruch A et al.
IJROBP
外部リンク
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
回復の経過
唾液分泌は通常、次のような経過をたどります。
治療終了直後
→ 唾液分泌は大きく低下
3〜6か月
→ 徐々に回復開始
6〜12か月
→ 多くの患者で改善
1〜2年
→ 回復のピーク
研究では、1〜2年かけてゆっくり回復することが報告されています。
参考研究
Murdoch-Kinch CA
J Clin Oncol
完全回復する人はどのくらい?
完全に元通りになる割合は研究により差がありますが、
おおよそ
30〜50%程度
と報告されています。
ただし現在は
- IMRT
- 唾液腺温存照射
- 口腔ケア
の進歩により、回復率は改善しています。

もし長く続いた場合、
ずっと治らない可能性もありますか?

回復の多くは治療後2年以内に起こるとされています。
そのため2年以上経っても強い乾燥が続く場合は、
完全回復が難しい可能性があります。
どのくらいの期間で回復しなければ、その後の改善は期待しにくい?
唾液腺の回復には時間がかかりますが、
回復の多くは2年以内に起こる
とされています。
一般的な目安
| 期間 | 回復の可能性 |
|---|---|
| 6か月以内 | 回復が始まることが多い |
| 1年以内 | 多くの患者で改善 |
| 2年以内 | 回復のピーク |
| 2年以上 | 大きな回復は少ない |
つまり
治療後2年以上経過しても強い口腔乾燥が続く場合、完全回復は難しい可能性があります。
ただし、
- 軽度の改善
- 対症療法による生活改善
はその後も可能です。
参考
NCCN Guidelines
MASCC Supportive Care Guideline
現在は副作用を減らす技術が進歩している

昔は口の渇きがとても大変だと聞いたことがあります…。

その通りです。
しかし現在はIMRT(高精度放射線治療)により、
唾液腺をできるだけ避けて照射することが可能になりました。
現在の放射線治療では
IMRT(強度変調放射線治療)
により唾液腺を避ける照射が可能です。
その結果
研究では
口腔乾燥の発生率が大きく減少
しています。
参考研究
PARSPORT trial
Lancet Oncology
→IMRTについてはこちらの記事で解説しています。

もし口が乾いてしまったら、
自分でできる対策はありますか?

はい、いくつかあります。
水分の取り方や口腔ケアを工夫するだけでも、
症状がかなり楽になることがあります。
自宅でできる対策
多くの患者さんに効果的な方法です。
①こまめに水分を取る
- 水
- お茶
- スープ
などを少量ずつ頻回に飲むことが大切です。
②唾液を増やす食品
唾液分泌を刺激する食べ物
- レモン
- 梅
- 酢
ただし口内炎がある場合は注意してください。
③ガム・タブレット
キシリトールガムは
唾液分泌を促します。
唾液分泌の促進に
唾液分泌を促す方法として
・キシリトールガム
・ドライマウス用タブレット
なども使われることがあります。
特に就寝前に使用すると、
夜間の口腔乾燥が軽減することがあります。
④口腔保湿ジェル
口腔保湿剤は
夜間の乾燥対策として有効です。
内部リンク
放射線治療の口腔ケア
口腔乾燥の対策
口腔乾燥の対策として、口腔保湿剤を使用すると症状が楽になる場合があります。
代表的なものとして
・口腔保湿ジェル
・ドライマウス用マウスウォッシュ
・保湿スプレー
などがあります。
特に夜間の乾燥にはジェルタイプが使われることが多いです。

もし唾液があまり戻らなかった場合、
食事はどうすればいいのでしょう?

食事の工夫でかなり楽になります。
水分を一緒にとる・やわらかい料理にするなどで、
食べやすさは大きく改善します。
口の渇きが回復しない場合の食事の工夫
唾液減少が長期に続く場合でも、食事の工夫によって生活の質を大きく改善できます。
多くの頭頸部がん患者で推奨されている方法です。
水分を一緒にとる
食事の際は
- 水
- お茶
- スープ
などを一緒に摂ると飲み込みやすくなります。
「一口食べて一口飲む」
という方法が有効です。
食事をやわらかくする
乾燥した食品は飲み込みにくくなります。
おすすめ
- 煮込み料理
- スープ
- シチュー
- あんかけ料理
など
水分を含む料理が食べやすいです。
ソースやだしを使う
料理に
- だし
- ソース
- グレービー
- とろみ
を加えると飲み込みやすくなります。
避けた方がよい食品
以下は症状を悪化させることがあります。
- 乾燥したパン
- クッキー
- ビスケット
- 辛い食品
- アルコール
唾液分泌を刺激する食べ物
唾液分泌を促す食品
- レモン
- 梅
- 酢
ただし
口内炎がある場合は刺激になるため注意が必要です。
内部リンク
放射線治療の口内炎
味覚を感じやすくする食事
レモンなどの酸味を少し加えると、味を感じやすくなることがあります。
少量を回数多く食べる
口腔乾燥が強い場合は
1日3食ではなく
- 1日5〜6回
の少量食が食べやすいことがあります。
栄養サポート食品を利用する
食事量が減る場合は
- 栄養補助食品
- 高カロリー飲料
を利用することも有効です。
必要に応じて
- 栄養士
- 医師
に相談しましょう。
栄養補助食品
食事量が減った場合は、栄養補助飲料などを利用することもあります。
医療機関での治療
症状が強い場合には
以下の治療が検討されます。
唾液分泌促進薬
例
- ピロカルピン
- セビメリン
人工唾液
唾液の代替として使用します。
虫歯予防が非常に重要
唾液が減ると
虫歯が急激に増える可能性があります。
そのため
- フッ素塗布
- 定期歯科受診
- 丁寧な歯磨き
が重要です。
参考
American Dental Association
放射線治療による口の渇きの予防
完全な予防は難しいですが
次の方法で軽減できます。
- IMRT
- 唾液腺温存照射
- 口腔ケア
- 歯科連携

口の渇きが続くと、
ずっとこのままなのか不安になります…。

多くの患者さんでは時間とともに症状は改善していきます。
つらい場合は我慢せず、
医師や歯科医に相談することで対策が可能です。
口腔乾燥の対策
口腔乾燥の対策として、口腔保湿剤を使用すると症状が楽になる場合があります。
代表的なものとして
・口腔保湿ジェル
・ドライマウス用マウスウォッシュ
・保湿スプレー
などがあります。
特に夜間の乾燥にはジェルタイプが使われることが多いです。
放射線治療専門医コメント
口の渇きは、頭頸部放射線治療で最も生活の質に影響する副作用の一つです。
ただし現在は
- IMRT
- 唾液腺温存
- 支持療法
の進歩により、以前よりかなり軽減できるようになっています。
また、多くの患者さんでは
時間とともに唾液機能は回復していきます。
症状がつらい場合は我慢せず、主治医や歯科医に相談することが大切です。
関連記事
放射線治療では、口や喉にさまざまな副作用が起こることがあります。
口内炎・味覚障害・口の渇き・嚥下障害など、頭頸部の副作用についての全体像は以下の記事でまとめて解説しています。
まとめ
放射線治療による口の渇きは
唾液腺の影響による副作用です。
ポイント
- 治療開始2〜3週で出やすい
- 数か月〜1年で改善することが多い
- IMRTで発生率は減少
- 口腔ケアが重要
症状がある場合は
早めに対策を行うことで生活の質を保つことができます。
FAQ(よくある質問)
放射線治療で口が渇くのはなぜですか?
放射線が唾液腺に影響することで唾液の分泌量が減少するためです。特に頭頸部の放射線治療で起こりやすい副作用です
口の渇きはいつから始まりますか?
多くの場合、放射線治療開始から2〜3週間で症状が出始めます。
口の渇きは治りますか?
多くの患者さんで数か月〜1年程度で改善します。ただし完全には回復しない場合もあります。
水を飲めば治りますか?
水分補給は重要ですが、唾液分泌低下そのものを完全に改善するわけではありません。
ガムは効果がありますか?
キシリトールガムなどは唾液分泌を刺激するため有効な場合があります。
薬で治療できますか?
ピロカルピンやセビメリンなど唾液分泌を促進する薬が使われることがあります。
虫歯になりやすくなりますか?
唾液には虫歯予防作用があるため、唾液減少により虫歯のリスクが高くなります。
夜に口が乾くのはなぜですか?
睡眠中は唾液分泌が減るため、乾燥を強く感じることがあります。
人工唾液は効果がありますか?
一時的に口腔の乾燥を改善する効果があります。
予防する方法はありますか?
IMRTなどの高精度放射線治療により唾液腺への影響を減らすことができます。
放射線治療の総合ガイド
あなたの状況に合わせて詳しく解説しています。
この記事の執筆者
放射線治療専門医
放射線腫瘍学を専門とし、がんの放射線治療に従事。
患者さんやご家族に向けて、放射線治療の情報を分かりやすく発信しています。




























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